鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「中国 目覚めた民衆」

・中国 目覚めた民衆  習近平体制と日中関係のゆくえ
著者:興梠一郎
出版:NHK出版新書(Kindle版)



気がつくと、同僚や知人で中国勤務をしている人、していた人が結構な人数になってる。
お客さんでも中国への進出をしているところは今や「普通」だ。(ベトナムやタイへの転出を検討しているところもあるけど)
僕が就職した頃(25年前)には見られなかった風景。
中国がこれだけ経済大国になっている以上、今更これを後戻りすることは出来ないだろう。



一方で中国に対する懸念も高まっている。
尖閣諸島をはじめとした対外的な領土的野心
その裏付けともなる軍備の拡大
国内での反日運動
反日に限らない騒擾の増加と、一党独裁体制への不安・・・
本書は尖閣を巡る反日運動の高まりをフックとしながら、ネットの広がりによって拡散する「民主化」要求の現状を、各地での具体的な「事件」を紹介しながら解説し、ソレを踏まえた日中関係の今後、中国の方向性等について論じた作品である。
ネットの情報なんかを見てると、個々の情報については目新しいことはないんだけど、一冊にまとめることで分かりやすく整理されてる感じはあったかな。
マスメディアが拾わない視点を提示してくれていることは間違いないと思う。



作者は今後の中国にとっては「民主化」がキーワードであり、その方向にしか未来はないと主張しているようだ。
大筋、僕も「そうなのかな?」と思う。
一方で「アラブの春」の後に生じている中東での民主化の混乱や、民主化の進展の中で生じたミャンマーの少数民族弾圧/宗教対立なんかの構図を考え合わせると、
「果たして『民主化』を中国で進める時、そこで生じる混乱は周辺諸国/世界にとって許容できる範囲に収まるのだろうか?」
という懸念も感じざるを得ない。
「毛沢東」や「訒小平」といった、絶対的指導者がいなくなって、(意図的かどうかはともかく)一党独裁体制でありながらも中国の「独裁性」というのは緩和されてきており、(勿論ネットの影響もあるが)それゆえに現在の「民主化」の高まりもあるんじゃないかね?
この速度は速めながらも、一党独裁の中での「民主化」を進め、ソフトランディングする(そんなことが可能かどうかは何とも言えないけど)ってのが現在の中国共産党の方向性なのかな?
その足下を揺るがしているのが「官僚腐敗」であり、だからこそ中国指導部はそのことに対して警告を発し続けている・・・と。



「北朝鮮」という不安定要素もあり、中国の国内外への統制力が弱まることは短期的には強い不安材料なんじゃないかと思う。
ただし現状の懸念材料(腐敗や格差)に目をつぶることは、結果的に社会的な不満を増大させ、更に制御不能な形で中国国内で暴発してしまう可能性もある。
なかなか難しい舵取りだけど、この影響は中国一国にとどまらず、アジア/世界全体に対して影響を及ぼすものであり、単なる「国内問題」として整理しきれないのが現状だろう。



これこそ中国が「大国」となった証拠。
なんとも皮肉なことではある。