鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「21世紀のEV Cafe」

・村上龍と坂本龍一 21世紀のEV Cafe
著者:村上龍、坂本龍一ほか
出版:東京ニュース通信社(Kindle版)



「EV Cafe」は80年代に村上龍/坂本龍一が、当代の哲学者や思想家たちと対談する中から日本の未来を語るような内容だった・・・記憶があるw。
まあニューアカデミズムの流れなんかもあって、日本の「現状」に対する批判的な色彩は強かったものの、思い返してみれば「活力」や「明るさ」もあったなぁ・・・と。ここら辺は、3.11以降に語られた本書の対談の中で両氏もコメントされている。



本書はその「EV Cafe」を21世紀に蘇らせたもの。
・・・じゃ、ないんだよねw。
確かに3.11以降の二人の対談が採録されてはいる。でもその対談だけが「今」で、後は90年代の終わり(一つだけ00年)に雑誌に発表されて単行本化されていない対談なんだよ。
その対談も「EV Cafe」として語られているから(「エスクァイア日本版」の企画だったよう)「EV Cafe」としてまとめることは問題ないと思うけど、「21世紀の」ってのはどうかな?21世紀を展望した内容になってるのは確かだけど、やっぱりこれは「言い過ぎ」だろう。「売らんかな」の意識が垣間見えると思われても仕方ない部分はあると思う。



もっとも今、二人が同じ企画をぶつけられて乗るかというと、まあそれもないかな。
既に本書に収録された対談の中で坂本氏は「環境問題」への強い傾斜を明言しているけど、今の彼はもっと「行動」の方にスライドしているように思う。「対談」なんて段階は過ぎちゃってる印象だ。
村上氏も、90年代後半は「希望の國エグゾダス」を書いてた時期のようだけど、あの頃の「希望」を語る段階から、今は「個々人のサバイバル」に視点が移ってるんじゃないかね?そういう段階ではEV Cafeのようなアクションには食指が動かないだろう。(むしろ「JMM」のような自身のメディアを活用する方向の方が望ましい)



そういう意味ではこの段階で本書のような形で過去の振り返りがなされることにも意義があるのかもしれない。
指摘された課題やハードルの大半が(残念ながら)今も「生きている」という点においてもね。



まあ村上龍/坂本龍一に興味がある人なら一読するのも面白いかも。
「必読」とは言いませんが。