鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「悪の教典」

・悪の経典<上・下>著者:貴志祐介
出版:文春文庫



購入したのは少し前のこと。
先に読んだ妻は一晩で読み上げちゃったんだけど、僕は結局2週間くらい掛かっちゃったかな?
面白くない訳じゃない。
ただ個人的にモードがKindle化してて、何か持ち歩くのがタルかったんだよねぇ。文庫なんだけどさ。
で、週末にまとめた時間を見つけて(車の一ヶ月点検の待ち時間とか)、ようやく読み終えました。
何とか「義務」を果たしたような気分。



いや、面白い作品だったよ。
特に下巻に入ってからの畳み掛けるような展開は、「ページを繰るのもモドカシイ」って感じにもなった。
三池/伊藤英明の映画はこの後半にスポットを当ててるらしいけど、これは正解だろう。このドライブ感は極めて映画的だ。



逆にいえば前半の展開がちょっとシンドイってのはあるかな?
主人公のキャラ造形に費やされてるんだけど、ちょっとしつこ過ぎるような気がしなくもなかった。
主人公の「異常性」を描き込んだってことなんだろうけど、結構後半の展開はたぶんに暴発的なところがあって、前半で示される計算高く、合理的な「悪魔」としての主人公の造形にしちゃあ…ってところもあるんだよね。
確かに学生生活の「日常」が一気に崩壊する展開には「怖さ」があるけど、主人公の「悪魔性」はもう少し「天才性」に裏打ちされてたように思うんだよなぁ。
まあこの非人間的な論理展開こそが「恐ろしい」ってのも分かるんだけどね。
ただ「天才」って感じはちょっと…。
(それだけに主人公の復活に対する恐怖感ていうのに共感し切れなかったってのはあるかも。どうであれ強烈なトラウマになっちゃうのは間違いないけど)



とは言えボリュームに相応しい迫力のある作品なのは確か。
終盤の惨劇のインパクトは、ちょっと他では読んだこのとのないレベルだった。
評判に応える出来と言っていいと思うよ。



まあでも楽しい小説じゃないからね。
ダメな人はダメでしょう。
僕も「映画はちょっと…」って気分。
続編があったら?
うーん、それもパスかなぁ…。