鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「探求」

・探求 エネルギーの世紀<上・下>
著者:ダニエル・ヤーギン 訳:伏見威蕃
出版:日本経済新聞出版社



この作者の「石油の世紀」は、ズーッと「読まなきゃなぁ」と心に引っかかっていた作品だ。
ただ同じく上下巻の長大な作品に、何となく気後れしているうちに、続編が出ちゃった、って訳。
何だかなぁだが、ここはいい機会と考え直して、手にとってみた。



(おそらくは「石油の世紀」を受けて)湾岸戦争以降の石油業界の状況から筆を起こし、天然ガス、電気、環境問題、再生可能エネルギー、次世代自動車・・・と、「エネルギー」をテーマとして幅広い題材を取り上げ、一覧した内容になっている。
これだけの作品だから、執筆そのものは東日本大震災前から準備されてたと思うけど、内容は「東日本大震災」のインパクトを踏まえ、エネルギーの未来を論じている。
「エネルギー」の複雑な様相が、この震災によってより濃くなったって印象もあるなぁ。



長大な作品だけど、(翻訳もいいんだと思うけど)実に読みやすく、興味深く読める内容になっている。
基本的には歴史と状況を丁寧に説明しているんだけど、そこに関わる人間たちの物語を程よく読み込むことで、「読み物」として読者を惹きつける。
まあ石油だけを取り上げても、1バレル「10ドル」から「百数十ドル」の間を行ったり来たりするようなドラマチックな世界を題材にしてるんだからね。
上手く描けば面白いに決まってるし、本書は「上手く」やってると思うよ。



まあ「じゃあどうなるんだ!」って感じもあるんだけどw、「そんな簡単に答えは出ないよ」っていうのが、本書の主張でもあるからね。



多様なエネルギーが錯綜する中で、どのエネルギーが将来で大きなポジションを占めるのか。
そもそも(石油のように)一つのエネルギーが支配的なポジションを占めるような未来が続くのか。



本書を読むと、「そりゃ分からんなぁ」ってのが、理解できる。(だからこそ、「探求」なんだろう)
まあ、当分は「石油」の時代が続きつつ、「天然ガス」がシェアを上げて行く・・・ってことになるんだろうけどね。



何にせよ、「エネルギー」という視点からみた近現代史として、本書は秀逸な内容になってると思うよ。
震災後の「今」、日本において読むことが求められる一冊と言ってもいいんじゃないかな。
分厚さを気にせずに読み始めたら、すぐに描かれた世界に踏み込むことができると思う。
予想以上の一冊でした。



・・・とは言え、これを読んじゃうと、先行する「石油の世紀」を読む意欲は削がれちゃうけどねw。
ま、いいか。