・世界の運命 激動の時代を読む
著者:ポール・ケネディ 訳:山口瑞彦
出版:中公新書
成毛氏の新作を読んで、「教養」と言うことが頭の片隅に残っていて、手にしたのが本書。
「教養」を身につけるためって言うよりは、「教養」ある人物のアウトプットってのがどんなものかを確認したくなったってところかな。
本書の作者は「大国の興亡」の作者。
英国風のシッカリした教養が土壌にあると期待してのことだ。
(なーんて言いながら、 肝心の「大国の興亡」を読んだことはないんだけどねw)
集められた文章は07年くらいから最近までに発表された「少々エキセントリックな」エッセイ。
登場人物にはプーチン「大統領」やブッシュ「大統領」、オバマ「候補」なんかも登場するからね。
決して最新の国際情勢にアップデートされてる訳じゃない。
(はて?その頃の日本の首相は誰だったかな?)
それでも収められた個々の論評が古びることなく読める。
それこそが、本書が「教養」 に近しいところから出てきたことの証拠かもしれない。
鋭い分析。
読みやすくそれでいて比喩に彩られた文章 。
頻繁に顔を出すユーモア。
悲観と楽観のバランス(悲観の方が少し優勢だ)。
一見関係のないコトを並べ、つなげるコトで新たな視点を提示する豊穣さ。
実に感心させられる。
「大国の興亡」の作者らしく、作者の興味は「大国」米国が圧倒的なポジションを失いつつある現状と、米国に代わる「大国」の可能性(最有力候補はもちろん「中国」だ)にあるようだ。
ただその「結果」の可能性を作者は論じたい訳じゃないだろう。
その「過程」こそが作者のテーマなんじゃないかと思う。
実現性と仮説と、希望の可能性。
語られるのはそう言ったコトなのかもしれない。
これは実に成熟したスタンスだと思う。
まあ教養ある人の「雑談」にしちゃあ、ちいと堅すぎる内容ではあるけどねw。
序文には震災に見舞われた日本に対する言葉が寄せられている。
それでいて本文では日本はあまり論じられてない。
これこそ大局から見た日本のリアルなポジションなのかも。
そんなことも考えさせられました。