鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「僕は君たちに武器を配りたい」

・僕は君たちに武器を配りたい
著者:瀧本哲史
出版:講談社



〈本書は、これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非情で残酷な日本社会を生き抜くための、「ゲリラ戦」のすすめである。〉(p.1)



じゃあ、40過ぎのおっさんが読む本じゃないじゃん?
イヤイヤ、これが予想以上に考えさせられる内容だったんだよねぇ。
これからバリバリ「ゲリラ戦」やるには遅過ぎるんだろうけど、どういう戦いが行われるかを知っておくコトは、生き抜くには結構重要なことだからね。


〈本書は、一人の投資家である私がこれまで実践してきた「投資家的な生き方」のすすめである。〉(p.6)


作者がすすめるのは「投資家的」な生き方であり、「投資家」になるコトではない。
作者自身は投資家でもあるんだけど、むしろ「株」に手を出すコトにはネガティヴでさえあるからね。
それでいて「投資家的」とは何か?
ここが読みどころの一つであり、40過ぎのオッさんにも「気付き」をもたらすトコでもあるわけだw。


作品としては、まず日本に訪れた「本物の資本主義」について論じている。
ここは「自由主義的経済」であり、「グローバリゼーション」であって、内容としては橘玲氏の作品にも通じるかな?
商品だけでなく、人材や能力ですらコモディティ化してしまう現代の「資本主義」の「現実」が語られてる。


その「現実」を前提に、作者はその中で生き残れる人材のタイプを次に論じる。
本書の特徴はココだね。
この分類と定義は読ませるし、具体例に裏付けされてて分かりやすい。
こう言うのって「見方」だから「正解」はないんだけど、「投資家的生き方」を考える上で、確かに役立つ分類になっている。


作者はまず「資本主義」で稼げるタイプを6つに分類する。


1.商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)
2.自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
3.商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人(マーケター)
4.まったく新しい仕組みをイノベーションできる人(イノベーター)
5.自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
6.投資家として市場に参加している人(インベスター=投資家)


このうちインターネット等によりコモディティ化がすすみ、急速に社会が変化する「現代」においては、「トレーダー」と「エキスパート」は優位性を失っていると言うのが作者の見たて。
そして残りのタイプすすめてるわけだけど、その中核となるのが「投資家」。
と言うか、「投資家的」であることでこの4つのタイプを戦略的に使い分けるコトができるって言った方がいいかな?
置かれた環境や、時代の状況によって、どういう戦略をとるかは変わるからね。
重要なのは「戦略を考えて取り組むこと」であって、そのスタンスを取ることが、「投資家的」と言ってもいいと思う。


そう言う観点からは、「投資家的な労働」と「サラリーマン的な労働」って言うのは、「職」の問題ではなく、「意識」「視点」の問題と言うことになる。
「投資家的な視点を持って働く」
これは20代、30代の若者だけに求められるものではない。
むしろ40代にこそ必要なスタンスだろう。
まあ作者は「40になって気づいても遅い」って言いたいんだろうけどねw。
確かにそのベースとなる「リベラル・アーツ」に今から取り組んでも…ってのはあります。


とは言え、いまの40代だって寝て過ごしてた訳じゃない。
ここに至るまでの経験や知識は確実に積み重ねられており、その中には「リベラル・アーツ」的な要素もある(と思いたいw)。
それを踏まえ、意識を「投資家的な働き方」に切り替える…ってのは僕らにだって出来るんじゃない?
そうじゃないと、「ゲリラ戦」の時代に耐えられない、って「現実」もあるしね。


何にせよ、予想以上に刺激的な一冊でした。
作者にとっては処女作のようだけど、中々のもんです。
若い時に読むと、確かにもっと刺激的なんだろうけどねぇ。(いや、切迫感がわかんないかな?)