鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「日本企業にいま大切なこと」

・日本企業にいま大切なこと
著者:野中郁次郎、遠藤功
出版:PHP新書(電子書籍版)



少し前に読んだ「どうなる?日本企業」が日本的経営の問題点を指摘してたのに対して、本書はアメリカ型経営の限界を指摘し、日本型経営の再評価をうたっている。


真逆じゃん?



これが意外にそうじゃないんだよな。
どちらの作品も、アメリカ型経営/日本型経営そのままを評価するんじゃなくて、手直しした上での適用を論じている。
いわば反対方向から互いに歩み寄ってる感じ。
そしてその両者が接近するところに立ち上がるのが、「スティーブ・ジョブズ」と言う…。


うーん、なんかジョブズが登場し過ぎだよね、最近w。
こうなると、
「確かにジョブズ/Appleの凄さ素晴らしさは認める。
しかし彼らの経営が普遍化し、理論化できるものなのかどうかは、冷静に考えるべきなんじゃないの?」
って言いたくなるねw。
ま、本書の場合評価してるのは「現場力」だから、理論化とはチョット距離があるかもしれないけどさ。
(ビジョンと現場力を持ったジョブズを「プロデューサー」と称したのは、分かりやすくて良かった)


本書が主張しているコトを僕なりにまとめると、
「大きなビジョンを示すリーダーシップの下に、現場力を存分に発揮させる体制と権限移譲を行うコトが、日本企業をイノベーターとする」
って感じかな?
この「ビジョン」のところが 「手直し」。
そして「評価」が「現場力」になる訳だ。
まとめてみれば、実に「失敗の本質」(野中氏)と「現場力」 (遠藤氏)の作者らしい主張になっとりますなw。
そしてその根本にあるのは
「震災の復興に備えるためにも、日本企業は『稼ぐ』ことができる存在にならなければならない」
と言う問題意識。
「変化」
これが日本企業に求められているのは、日本型経営を再評価する本書においても同様である。


本書の場合、もはや政治には大きな期待をせずw、企業が自ら変革し、社会の変革に寄与するコトを主張している。
まあ今の政権の状況を見るとそうも言いたくなるのも分かるし、あるいは国際経済の停滞を考えると、そこには民主主義の限界さえ垣間見えるのかもしれない。


見方を変えると、政治への過度の期待は「依存」であり、そこには強制的な中央集権、ファシズムの誘惑もある。
その危険性を考えると、民間企業の活性化こそが重要…ってのは、「失敗の本質」的にも同意できるなぁ。


本書ではビジョンと現場をつなぐ存在としての「ミドル」の存在意義と現状の課題についても、多く語られている。
これはまあ、僕に突きつけられた「課題」でもあるんだよね。
これはこれで考えさせらました。