鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「どうする?日本企業」

・どうする?日本企業
著者:三品和広
出版:東洋経済新報社



<日本企業は管理職の延長線上に経営者を置いてしまったため、管理一辺倒に陥り、寿命を迎えた事業の立地にしがみついたまま、利益が伴わない不毛な努力を続けている。>(P.3)



<自社の「やりたい仕事」を精密に定めることこそ、経営戦略の第一歩となるのです。それは、集団が合議で決めることではありません。卓越した個人の心の叫びに従うものなのです。 >(P.216)



読み終えた時、
「いでよ!日本のスティーブ・ジョブズ」
って声が聞こえる様で、ジョブズ本の読み過ぎかと思っちゃったよw。
まあでも煎じ詰めれば作者の言いたいのはそう言うコトなんだけどね。
「経営における『個人』の復権」
とまでまとめちゃうと、チョット綺麗にまとまり過ぎかな?



作者の問題意識は、成長路線の中で日本企業が収益性を下げて来た(ものの見事に)にある。



「ジョブズ・ウェイ」では収益と言った「数字」を追い求める経営に警鐘が鳴らされていた。


例えばこんなことを言う人がいる。
「収益率が低くとも利益が出てるのはコストをまかなえているからであり、社会的存在意義がある。
収益率が高いのは、情報非対称等による「ボッタクリ」に過ぎない。」



…ふむ?
しかし利益率が低い事業ってのは結構コモディティ化してる事業で、そこで利益を出す為にコスト切り下げが常態化している。
一方で収益率が高い事業は新しい価値提供を社会に行なっている事業であるためであり、社会を豊かにし、前進させるコトに役立ってる。
…とも言えるんじゃないかね?
特に日本社会においては「収益」に対してそう言う視点を持ち込んだ方がポジティヴなビジョンを手にするコトができると思うよ。



まあそれにしても見事な分析だね。
「収益性」を切り口に、
技術革新
工業化
多角経営
新興国進出
集団経営
と言った、日本企業が選択する経営方針の「罠」をクリアに描き出している。
それぞれに「失敗例」としての大企業を遡上にあげるコトで(セイコー、ヤマハ、新日鉄etc)、リアリティはタップリ。
納得感あったなー。



作者が言ってるのは、言い換えれば、
「ブルー・オーシャンを探せ」
コトなのかもしれない。
だがそれは単なる「儲け」のためじゃない。



<成長は結果として実現するもので、目標は、「事業活動を通して世の中にもたらす変化」という言語でかたるべきです。>(P.216)



この「企業」観を踏まえ、社会に対する新たな価値提供にトライすることを、企業に、個人に求めているのだ。
学者さんらしい分析の向こうに、そんな「熱さ」も感じるコトができる。(そういや同じ一橋のセンセが書いた「創発的破壊」もそんな本だったな)



好著です。
オススメ。