鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ジョブズ・ウェイ」

・ジョブズ・ウェイ 世界を変えるリーダーシップ
著者:ジェイ・エリオット(&ウィリアム・M・サイモン)、訳:中山宥
出版:ソフトバンク クリエイティブ



読む前はジョブズ流のリーダーシップ(作者は「iリーダーシップ」と称している)の原則やハウトゥに関する作品かと思ってた。
「驚異のプレゼン」や「 驚異のイノベーション」みたいにさ。
作者自身、はしがきでそんなコトを書いてるしねw。



でも正直言って、そう言うハウトゥものとしては本書は今ひとつだと思う。
「こう言う風にやれば、スティーブ・ジョブズ流のリーダーシップが身につきます」
なんてワークは本書にはない。
提示されてる原則も、もうチョット整理した方がいい感じもするくらいだ。



それでも本書には一読の価値がある。
僕は実に楽しんだよ。
今、iPhoneを使ってる人、いや、PCを使ってる人なら是非とも読んでみて欲しい。
PCの世界で、一人のビジョナリーがどんな道を歩いて来たか、彼が何を見据え、如何に実現して来たかが、ここにはシッカリと描かれている。



それならジョブズの伝記を読めばイイじゃん。
もうすぐ自伝も出るらしいし…。



まあ僕も自伝は読むつもりだけどw、本書は伝記とは違い、ジョブズのそばにいて、共にビジネスを取り仕切り、その過程でジョブズに魅了された人物による「ジョブズ伝」であり、「ジョブズ分析」なのだ。
近しい人物ならではの意外なエピソードが紹介されながら(時にそれは通説を否定したりする)、そこにビジネスマンとしてのジョブズの評価・分析が加えられる。
本書の特徴はソコであり、その絶妙な距離感によって、実に興味深い出来になってると思う。



まあ根本は(ジョブズ自身が再三言ってるように)「没入出来るほど好きなコトを見つけ、全身を投げ入れろ」ってコトなんだけどねw。
実にイタイ教えではあるんだが…。
加えて、消費者体験の重視とそこに根ざす細部へのこだわり、人材の鼓舞の仕方、チーム・ワークの運営、ブランディングへのこだわり…等々。
でもまあ、こう言う風に整理しちゃうと、それは今まで言われて来たコトと大差はないように見えちゃうね。



やっぱり本書の特徴はジョブズと作者の距離感にあるんだろうな。
そのコトが、他作品にない「ジョブズ体験」を読者に提示してくれていると思う。



そろそろiPhoneの新しいバージョンが発表され、併せてiOS5がiCloudの世界を開いてくれるコトになる。
間違いなくジョブズは次の地平を提示しようとしているはずだ。
本書で描かれるジョブズなら間違いなく。



願わくは、彼の体調が悪化しないコトを。
僕は本当に願っている。
作者は最終章で「ジョブズ後」についても言及しているけど、その「賭け」は厳しいんじゃないかと思うんだよねぇ。(Apple以外で出てくる可能性の方になら賭けるけど)



もうしばらく、このビジョナリー描く世界を見たいと言うのが今の僕の願いです。
(熱烈なMacファンじゃあないんだけどね)