・ iCloudとクラウドメディアの夜明け
著者:本田雅一
出版:ソフトバンク新書
先週末、日本サービスを開始した「hulu」を早速登録した。
ま、一ヶ月無料だしね。
これでiTunes/AppleTVに続いてネット動画サービスを利用するのは2つ目。
まだhuluの使い勝手はわからないけど、ダウンロードも可能なiTunesに比べると、Wi-Fiでのストリーミングは利用場所は限定される。
でも利用のハードルはグッと低いって印象もあるなぁ。
ここら辺の立ち位置はサービスとして面白いなぁと思っている。
本書でも紹介されているように、日本のサービスとしては「アクトビラ」がある。
ソフトの充実さはずっと上らしいけど、僕は使ったコトない。
その最大の理由が「消費者ユース」目線。
ここが 全くなんだよね、アクトビラは。
そしてその構図はネットサービスにおける日本の立ち位置にも共通するものがあり、本書が論じているクラウドが普及した世界には致命的な欠点となるとも思われる。
本書の書評で小飼弾氏はクラウド時代の「こちら側」の重要性を指摘しているが、「消費者目線」は正に「こちら側」に立つために必要な拠り所。
ここを軽視したコトがソニーの退潮に繋がり、ジョブズと言う人間を通じてコレを徹底したコトが、Appleの復活と隆盛を導いた。
iCloudでAppleがクラウドサービスに踏み出すのは、その論理的帰結として当然なワケだ。
本書を読んで僕が最も興奮し、読後最も失望したのは「ソニー」だ。
本書で作者はAppleを巻き返す戦略として、ソニーのクラウドサービス戦略を紹介している。
これは個人的には結構「おおっ」って感じだったんだよね。
ソニータブレットの発売にあわせて日本でも…って読んで、次のタブレットはiPad3じゃなくて、ソニーを買おうかな、って思ったくらいだもん。
で、先日ソニータブレットの発売がリリースされたのを思い出し、HPを見に行ったら…。
?
何もない。
海外で先行されているミュージックアンリミテッドのリリース発表も、戦略的なキュリオシティのぶち上げも、何もなし。
何やらそれを思わせる概念図みたいなのはあったけど、アレじゃあ何にもわかんないよ。
盛り上がった気持ちは即座にペチャンコになってしまった。
この話。
単なる作者の読み違いや、ソニーの能力不足ならまだいい。
僕が恐れるのは、「ジャパン・パッシング」だ。
つまり複雑な著作権関係がある日本においては、クラウドでコンテンツを扱うサービスは展開しないと言うビジネス判断がなされているのではないか…という懸念だ。
iBookの放ったかされぶりにはAppleのそんな姿勢も窺えるような気がしている。
ソニーまでもがそう言う判断をしているとしたら…。
杞憂だと思いたいが、20%くらいはそうなんじゃないかと僕は感じてるんだよね。
「ウェブ進化論」は「あちら側」の可能性を指摘し、ネットの新しい時代を指し示してくれた。
本書はそれを受けて 、「あちら側」のあり方と、「こちら側」の重要性を踏まえ、「クラウド」がもたらす更なる新しい時代を示唆してくれている。
実に刺激的な作品だし、面白く読めたよ。
日本の現状への懸念も生みつつね。
本書が広く読まれ、「クラウドメディア」 という概念が共有されるコトで、この懸念が払拭されるコトを期待したい。
頼みますよ、ソニーさん。