・ソーシャルメディア進化論
著者:武田隆
出版:ダイヤモンド社
「企業コミュニティ」の先駆者によるソーシャルメディア論。
「企業コミュニティ」ってのは、
企業がインターネット上に「場」を設け、そこで自由に消費者にコミュニケーションしてもらう中で、企業のブランド価値やロイヤリティを高めると共に、企業サイドも深い消費者情報を共有するコトで、営業販売の展開や商品開発の質を上げるコトができる
…みたいなネットマーケティングの一分野かな?
作者はその手法をアイディアからビジネスにまで育て上げた人物である。
実は正直いうと、僕は作者ほど「企業コミュニティ」については評価出来ない。
確かに「企業」と言う核を通すことによって、個人が社会に働きかけるって言う構図は刺激的だ。
先に読んだ「創発的破壊」で、ソーシャルビジネスの可能性に言及してたが、それにも通じる視点がここにはある。
「企業」「個人」「社会」の、ある種、理想的関係性がそこには描かれている様に思う。
でもねぇ。
それが社会的「力」となるには、まだまだネット利用者には偏りがあると思うんだよね。
確かに日本のネット利用者は数千万人にはなっているだろう。
だが、その中で自分自身の考え方や思想、社会との関わり等をアウトプットしてる人がどれだけいるか?
政権交代前後のネット言論と現実の乖離や、震災後のネット上の騒ぎを考えると、ここには疑問を覚えざるを得ない。
もちろん、活用者が増えてるのは確かだし、この流れは不可逆だろう。
また作者が考える「企業コミュニティ」においては、「量」より「質」「深さ」が求められるだけに、こうした「広がり」は決定的ではないのかもしれない。
それでも最終章で作者が語る様な「夢」が実現するには、ここは超えなきゃならないハードルだろう。
じゃあ、本書は面白くなかったのか?
いやいや、メチャクチャ面白かったですw。
それは作者がインターネット初期から「現場」にいて、ネットの動きと格闘しながら今のポジションを手にした人物だからだろう。
体験に裏打ちされたネットビジネスの動きや、ソーシャルメディアの分類など、実に興味深かった。
何らかの形でソーシャルメディアに関与する場合、この見取り図を念頭において置くと便利だと思うよ。(価値観/現実生活、情報交換/関係構築を軸に、4分類を考えている。納得感あります)
「企業コミュニティ」についても、広がりの課題はあるものの、現時点における企業のネット活用の先端であるコトは間違いないんじゃないかな。
まあ大体は上手く行ってる様には思えないからw。
そう言う意味で、「企業」と「個人」の関係をネット上で構築するには、こう言う形が最も望ましいんだろうなーとは思うよ。
それが全ての企業に適用できるって訳でもないだろうけど。
(この手法を多くの企業が撮る様になると、個人の時間には限界があるだけに、誘導の問題が出てくるコトになるだろう。
これは「広がり」の問題と相関関係にある話)
ネットに深く関わってきた人物によるインターネット/ソーシャルメディア論として前半を読み、ネットビジネスで収益化を果たそうとする苦闘記として後半を読む。
マーケティングに関わらぬ身としては、そう言う風に本書を楽しんだって感じかなぁ。
僕もネットの可能性は信じたいと思ってはいるからね。
確かに刺激的な本ですよ。