鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「GIGAZINE 未来への暴言」

・GIGAZINE 未来への暴言
著者:山崎恵人
出版:朝日新聞出版

「GIGAZINE?何か、見たことあるような・・・?」

と思ったら、Googleリーダーで流れてくるニュースサイトですな。
この日本最大のニュースサイトの編集者が語る来るべきネット社会像。
・・・と言うか、提言だね。
「こうなるだろう」
って部分も少なくないんだけど、ポイントは、
「こうなって欲しい」
って方にある。


内容としては、ネット社会に警鐘を鳴らした「人間はガジェットじゃない」と対になるような主張と言ったらいいかな?
まあ、あの本を読んだ後だから、そういう本を選んだんだけどさw。


本書の作者は、「量から質が生まれる」と主張し、「集団知」に対しても期待感を持っているように思える(ネットによる直接民主主義にも言及してるし)。
共に「ネット」「IT」を駆使しながら、ここらへんのスタンスには差異がある。


一方でその二人が、「課金制度」の重要性に言及しているのも面白いね。
「フリー」に対する評価が分かれながらも、「創造性」と言うことを考えたとき、ここに言及せざるを得ないと言うことだろう。
その延長線上として本書の作者は「無料であるものに対価を払う」=パトロン制度の可能性を見てる訳だけど・・・うーん、コレはどうかな?
その実現のために「教育」が重要って言うのも、確かに「教育の重要性」は間違いないんだけど、そういう方向性に「義務教育」が舵を切ることが現実的に語りうることなのかどうか?
ネット周りの事態って言うのは、思わぬスピードで動いちゃうか
ら、「あり得ない」とは言い切れないけど、「どうだかなー」って気分は正直ある。
そういう意味では本書の作者はかなりの「理想主義者」なのかもしれない。


でもね。
こういう「暴言」は、「未来」に対して希望を切り開くと言う意味で、価値があると思うよ。
「経済基盤」(課金)を重視している辺りは、安易な「フリー万歳」論とは違って、しっかりとネット社会の創造性担保の課題を認識しているからこそだろうし。
「著作権」の問題についても、「こうあるべき」と言う主張のみならず、「こうならざるを得ない」と言う状況分析もキチンとされていて、ただの「夢物語」が語られてる訳じゃない事も理解できる。
「人間はガジェットじゃない」とはスタンスを異にしながら、意外に主張は重なってきたりする辺りが、本書の面白さでもあるんじゃないか、と。


実際にニュースサイトを運営する人間による現場からの提言には、それなりに重みがある。
「パトロンモデル」が成立するかどうかには疑問もあるんだけど、一方で現在の日本の著作権制度がネット社会において限界に来ているのも事実であり、そうした中で何らかの「経済基盤」と「フリー」の折り合いを付けないと、「創造性」が生まれる土壌そのものが貧弱化してしまう可能性があることは否定できないと思う。


そのことをどう考え、どう対処すべきか?


既得権益の側にいる人間ではなく、ネットサイドに立つ人間こそがそのことを真剣に考えなければならない。
作者はそう言いたいんじゃないかなぁ。


まあ何にせよ、読んでて刺激を受ける作品なのは確かですよ。