鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「V字回復の経営」

・V字回復の経営  2年で会社が変えられますか
著者:三枝匡
出版:日本経済新聞社(Kindle版)

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)



上司が「影響を受けた本」として挙げた作品。
経営コンサルタントの作者が関与した「企業改革」の実例をベースに(一つの会社を核に、複数の例を交えているようです)、「小説」仕立てで書かれています。
「小説」だから読みやすいし、入りやすい。でも「中身」はちょっとすぐには消化できないくらい詰まっている。
そういう作品でした。


例えば、


<トップの呼びかけやミドルの話し合いで会社が本当に変わってくれるなら、世話はないのだ。
よく計算された総合的アプローチの切り口を経営者が用意し、そのうえでトップ自ら矢面に立つ覚悟で社員の規制価値観を突き崩していかなければ、実際には何も起きないのである。>


あるいは、


<営業の「やってもやらなくても同じ」は、①「戦略」が個人レベルまで降りていない、②毎日の「活動管理」のシステムが甘い、の二つによる。>


こういうのもありますね。


<ダメ会社というのは、昨日組織ごとに被害者意識を蓄積させるのですね。そして、会社全体の赤字や負け戦なんて、自分のせいでないと全員が思っているんです。>


<若手営業マンへの育成指導がおざなりになっていることも指摘された。OJTというのは、多くの日本企業で「何もしない」の代名詞なのである。>


いくらでもあるんですが、まあこの辺で。
グサッと来たり、頷かされたり、考えさせられたり・・・。
刺激満載ですw。


作者自身は日本の「企業経営」に問題意識を持ちながらも、「米国流経営」を良しとはせず(そもそも「米国流経営」が日本企業の分析と現場でのトライアンドエラーの上に成り立っているという皮肉があるんですが)、日本企業なりの「経営」のあり方を模索しています。
本書の中核となる例は「コマツ産機」を実例としているようですが、ご自身も企業経営に関与しており、成果もあげています。
「机上の空論」でない「何か」を感じさせるのは、それゆえでしょう。


上記に挙げたような「現状の認識」(分析の前)から、どのように「改革」を進めていくか・・・を上げ始めたら、それこそキリがないんですが(読む方が早いくらいw)、個人的に考えさせられたのは、
「改革を進める時間軸」
それと
「時間連鎖」
と言う考え方でしょうか?
ひとことで言えば「スピード感」と言うことになるんですが、もっと具体的なプロセスに沿って考える切っ掛けになります。
(結構しんどい・・・というのも分かりますがねw)
<企業変革ではスピードに関する組織カルチャーを最初にリセットしないと勝利の方程式は動き出さないことが多い。>
って指摘もあります。


<「われわれが『戦略』や『商売の基本サイクル』をいじくりまわす目的はただ一つ・・・幹部や社員のマインドを一つにすること」
「みんなが目的と意味を共有すること・・・そうすれば私たちの行動が束になり、すごいエネルギーが出るようになる。>


まずは目指すところはココでしょうか?
その土壌の上に、<仕組みの強さの構築>となるわけですが、まずはココ。
いずれにせよ、


<経営組織の改革とは、「正しい」と思われることを、「愚直」に、必死になってやり通すことである。それは先頭に立つ人の果てしない情熱の投入が必要である。>


「楽」じゃなさそうw。
でも「充実感」はある。
読みやすいけど、一読で「分かった」って本じゃないけど、読みごたえは間違いなくある作品でしたよ。
(<筆者の経験では、戦略の内容の良し悪しよりも、トップが組織末端の実行をしつこくフォローするかどうかのほうが結果に大きく影響がある。戦略を決定したらそれで自分の役割が済んだつもりのトップは多い。>
指示レター・メール出しっ放し、イベントやりっ放し・・・じゃ、アカンちゅうことです。
これまた耳が痛い・・・)