・クレイジーで行こう! グーグルとスタンフォードが認めた男、「水道管」に挑む
著者:加藤崇
出版:日経BP社
どっかで作者のインタビュー記事を読んで、
「面白そうやな」
と思って購入。
東大初のベンチャー企業「シャフト」をGoogleに売却して有名になった起業家が、2015年に渡米して、アルゴリズムで水道管の状況を推測するソフトの会社をM&Aするまでの「あれやこれや」を綴った作品です。
M&Aが決まってから回顧録的に書いた作品じゃなくて。2015年の渡米の段階から同時並行的に連載したものをまとめた作品なので、「臨場感」は凄くあります。
「なるほど。シリコンバレーで起業して、ベンチャーを経営するってこんな感じか」
ってのが身近に感じられる印象。
(まあ、やや事業としては「調子良過ぎる」気がしなくもないんですが、それは結果論なんでね)
で、本書に関しては、多分、
「こんな働き方が、イノベーティブなんだ」
みたいな感じで打ち出されてる点があるんじゃないかと思います。
出版のタイミングは測ったもんだとは思えないけど(いつM&Aできるかなんか、わからんかったろうしw)、「働き方改革」法案が出たタイミングですからね。
「ビジョンと熱意があれば、長時間労働なんて!」
分かんなくはないんですけどね。
でも一方で誰もが「起業家」や「経営者」を目指すわけじゃない。
①経営者(起業家含む)
②「①」を目指し、自己研鑽するビジネスマン
③与えられた仕事を、熱意と創意で取り組むビジネスマン
④与えられた仕事に取り組みつつつ、ワークライフバランスも大切にするビジネスマン
①や②については、本書のような「働き方」もあり得るでしょう。
③あたりは上にも下にもなりうる層。
④だって、組織が回っていく上においては重要なメンバーです。
日本の場合、強い同調圧力の中で、①や②の「働き方」を③や④に強いてしまう傾向が強い…ってのが問題なんですよ。
そしてその際、得てして本来は経営者が取り組まねければならない「生産性を高めるための投資や構造改革」すら行わず、安易な精神論だけが先行してしまうという…。(それがハラスメントの温床にもなる訳です)
僕は今の「働き方改革」は重要な取り組みと思ってるんですが、これはこういう日本的環境下では、「強制力」を働かせて、「生産性を高めるための投資や組織構造改革」に経営陣を追い込まなきゃいかんだろう、と感じているからです。(そこら辺は、デービッド・アトキンソンさんの考えに近いです)
「ルール」は変わったのだし、少子高齢化や人口減少を背景として変えざるを得なかった。
その「ルール」の中で如何にしても競合を圧倒できる「生産性」を実現するか。
…求められてるのはここなんだと思います。
文藝春秋に丹羽宇一郎さんが記事を書いてましたが、あんまりな話に頭がクラクラしました…。(全ての上司が変わるのを待ってたら、どうなることやら…)
<「心底失望した」伊藤忠元会長・丹羽宇一郎(80)が、政府の「働き方改革」を徹底批判!>
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0524/bso_190524_6137975982.html
ちなみに本書の登場人物たちは、確かにバリバリ働いてますが、同時に仕事の仕方はスピーディーで官僚的な不合理さとは程遠い印象です(まあ、法律的なところは大変そうですが)。
少なくとも「承認」を得るために「印鑑」をもらったり、会議前に上司にご進講…なんて感じはありません。
「働き方改革」に文句を言う前に、まずは「印鑑」をどうにかしたらどうでしょうかねw。