・セイバーメトリクスの落とし穴 マネー・ボールを超える野球論
著者:お股ニキ(@omatacom)
出版:光文社新書
イチローが引退会見で語ったセリフ。
<メジャーに来てから今に至るまで、全く違うものになった。
頭を使わなくてもできる野球になりつつあるような、これがどうやって変化していくのか、次の5年、10年。
しばらくはこの流れは止まらないと思う。>
<頭を使わなきゃできない競技なんですよ、本来は。
でもそうじゃなくなってきているのがどうも気持ち悪くて。
ベースボールの発祥はアメリカだから、その発祥がそうなってきていることに、危機感を持っている人はけっこういると思う。
日本の野球がアメリカに追従する必要は全く無い。
やっぱり日本の野球は頭を使う面白いものであってほしい。
アメリカの流れは変わらないので、せめて日本の野球は大切にしなければならないものを大切にする野球であってほしい。>
ここら辺のことに言及している記事かブログに本書のことが紹介されてて、読みたくなって購入してみました。
もともと「マネー・ボール」で知られるようになった「セイバーメトリクス」がどんな風に具体的にメジャーを変えてきてるのかってのに興味もあったんですよね。
なんかふざけた様な著者名ですが、もともとツイッターで野球評論みたいなものを呟いてて有名だった人。
ダルビッシュが取り上げて、そこから交流が始まり、作者のアドバイスで調子を取り戻したり…ってことで有名になった方です。
詳しくはフォローしてませんでしたが、「そういう人がいる」ってのは知ってました。
作品そのものはヒジョーにマニアックで、時に全くついていけなくなりますw。
個人的には投球術の球種のあたりは、
「はあ、そんなもんなんでしょうか」
って、ただただ読み進めるばかりw。(ジャイロ回転のことは殆ど知らなかったってのもあります)
でも読んでると、データが揃ったMLBの分析を読んでいく中から、「野球ってものがどういうスポーツなのか」ってのが見えてくる様なところがあります。
MLBだけじゃなくて、日本の野球(プロもアマも)に関する言及も多くて、分からないなりにも漠然と把握できる様な気がしてくるとこも良いですねw。
データベースから、本書のベースには「セイバーメトリクス」的な視点がもちろんあります。
ただ作者の主張は「データに基づく野球をしろ」って訳じゃなくて、「データ分析」は重要ではあるが、そこに囚われるばかりでなく、知識や経験、それらに基づく勘なんかも重要なのだ…というところにあります。
先に挙げたイチローの言葉を「解説」したこの記事なんかにも近いですかね。(ホントにイチローがここまで突き詰めて考えているかどうかは分かりませんが)
<イチローが語る「頭を使わなくてもできる野球」とは>
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43156650R30C19A3000000/?n_cid=DSPRM1489
「エンターテインメント」としての<野球>という線からも考えさせられます。
ここ数年はプロ・アマ問わず野球の試合を見たことがなく、今季の開幕も全く頭から抜けてた僕ですが、それでも結構興味深く読めたので、野球好きの人にはかなり楽しめるのではないか、と。
ま、言ってることは結構オーソドックスなところに落ちたりしてるんですが、そのバックボーンにデータに基づく分析があるってトコが、読みどころですかね。
阪神のフロント。
ちゃんと読んでよ。