・私の少女マンガ講義
著者:萩尾望都
出版:新潮社
萩尾望都さんが2009年にイタリアで行った講義を中心に、その補足と2011年以降の自分の作品に関するインタビューを収録した作品。
実はあんまり期待してなかったんですけどねw。「ポーの一族」を再開した萩尾望都さんへのエールのつもりで購入しました。
それがこんなに興味深い一冊だとは。
講義そのもの内容については、同時代を走り続けてきた実作者の視線からの批評と言う点で面白いものはありますが、個人的には「さすがによくまとまってるなぁ」と言う程度。
むしろ、最近のエポックメイキング的な作品として挙げらている「大奥」(よしながふみ)や「ライフ」(すえのぶけいこ)なんかを、読んでないにも関わらず、「読もう」と言う気持ちにならないあたりに自分の歳を感じたりして…w。
ただその後に「補足」として収められているインタビュー。これは本当に興味深いですね。
萩尾望都が「実作者」としてコメントしてるんですけど、例えばコマ割りに関して色々と分析し、自分の作品や他の作者の作品なんかも取り上げながら、少女マンガにおいてコマ割りがリズムやスタイルを生み出していく重要な役割を持っている点を解説したりしています。
取り上げる作者や漫画なんかのバリエーションに、実作者としても読者としても萩尾望都さんが「現役」であることが強く窺えます。
「男には少女マンガのコマ割が理解できない」
と言う偏見には強く抗議したいですがw、(僕の不勉強のせいだけかもしれませんが)こーゆー解説はあまり目にしたことがなかったので、非常に興味深く読むことができました。
(それにしても「半神」。
分かってたけど、やっぱり「スゴい」!)
2011年の「なのはな」以降の作品に関する自作解説も面白いですね。
東日本大震災、福島原発事故が萩尾望都さん自身にどういう影響を与えたのか、それが作品にどういう形で反映しているのか。
一般的には読みどころとしてはここでしょうが、個人的にはやはり「ポーの一族」再開に関するコメントが読みどころ。
<ー新しい『ポーの一族』は、しばらく続くのでしょうか。
萩尾 そうですね。もう少し、描いてみたいですね。>
嬉しい発言じゃないですか。
「少女マンガ」について萩尾望都さんはこう話しています。
<少女マンガとは、少女の、少女による、少女のためのメディアだ>
作者と読者の距離感の話なんかを聞くと、確かにそう言う面はあると思います。
でも確実に自分自身の「一部」を作り上げたもの中に彼女の作品があることを考えると、決してそれが「少女たち」だけに閉ざされたものではなかったのだと、僕はつぶやきたいです。
そーゆー「男子」、結構いると思うんですけどね。