- 作者: 宮内悠介
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/04/21
- メディア: 単行本
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「盤上の夜」の作者による長編。
でもSFじゃないんですな。
カザフスタンとウズベキスタンの間のアラル海に面した小国の大統領が暗殺され、取り残された後宮の少女たちが、政権を担うことに…
って、「冒険小説」「シミュレーション小説」って感じでしょうか。
(「後宮」って言っても、愛妾がいるんじゃなくて、官僚養成機関みたいなもんなんだけど)
題名どおりその中に「日本人の女の子」がいて活躍するんですけど、厳密にいうと彼女だけが主人公とは言い切れないところもあって…作品としては、ちょっとそこが弱いかな。
彼女の「相棒」であるチェチェン出身の少女。
実質的には彼女も「主人公」を担っています。
特に終盤の展開は彼女の方を中心にドラマが進むので、その分、なんとなく「題名に偽りあり」って感じになっちゃいます。
ま、「役柄」を日本人少女に全て担わせるって構成もできたでしょうが、それだと「背負うもの」がちょっと違ってきちゃう。
こうしたかった作者の気持ちは分からなくもないですね。
「盤上の夜」は精緻な物語構成に読まされましたが、本書は良くも悪くももうちょっと「緩い」作品になっています。
ちょっと「ご都合主義」なくらいw。
「テロのどんぱちの後で、なんで演劇なん?」って展開も、なんともユルい。
でもそのエンタメな感じが、僕は好ましく思えました。1日で一気に読み上げちゃいましたし。
「テクノロジー」に関する思考実験みたいなとこもありますが、基本的には楽しく読めばいいんじゃないですかね。
「盤上の夜」みたいな、「傑作」じゃ〜ないですけど。