鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

言われるだけのことは…:読書録「ハローサマー、グッドバイ」

・ハローサマー、グッドバイ
著者:マイクル・コーニイ 訳:山岸真
出版:河出文庫

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)


オススメ本漫画(「バーナード嬢、曰く」結構面白いです)でオススメされてて、ちょっと気になってたのを見つけて購入。
「青春恋愛SF小説の傑作」
「SF史上有数の大どんでん返し」
…と言うのが「評判」ですが、
言われるだけのことはありますワ。読み終えて、「え?」って感じで、何箇所か戻って確認して、「そっか〜」と、ジワジワと感動が…って感じです。


まあ、「青春恋愛」の部分は「う〜ん…」ってところもあるんですよ。
年齢的に興味が薄れてきてるってのは別にしてw、微妙な三角関係の、もう一人のヒロインの扱いがねぇ。
いや、作者の描きたかったことから考えて、こういう設定は分かるんですよ。「人間」というもののある側面を描く上で、こういう「移ろい」は確かに描きたい。でもそれを「ヒロイン」に担わせるには…ってことで「二人」に分けたんでしょうが、その分、物語としての力強さはちょっと損なわれているような気がします。


ストーリーとしては「戦争・ディストピア小説」の側面も強くて、実は結構「陰鬱」な展開が続きます。
「青春恋愛SF小説」って言うと個人的には「夏への扉」を思い出すんですが、あれほどの「爽快感」はないですね。むしろ徐々に事態が悪化して、陰謀が進行する中で、ドンドン追い詰められていくという、息苦しさが作品を覆っています。
それはそれで「見事」なんですが、なんかもっと明るくて爽快なものを想像してたんだよなぁ…


が、最後の最後で「ドカン!」。
いやはや確かにこれは…。
「夏への扉」ほどの分かりやすさはないけど、「深さ」はこっちの方が上。階級社会であるイギリス社会を反映していると言いましょうか、何と言いますか。


個人的には主人公の両親の扱いが寂しい限りですがw、こんなもんっちゃあ、こんなもんかもね。
読んでる間は陰鬱なペースにちょっとしんどくもなりますが、それを補って余りあるラストではあります。
(読むなら10代後半がベスト、ではあるでしょう。それならもっと「青春小説」ノリでロマンティックに読めますw)