鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

面白いけど、半分は「この作者が書いた」って面白さ:読書録「天才」

・天才
著者:石原慎太郎
出版:幻冬舎

天才

天才


「田中金権政治」批判の急先鋒であった作者が、「田中角栄」の一人称で田中角栄の人生を振り返る。
面白い本だし、一気に読んだんですが、「面白さ」の過半はこの「背景」にあるような…。
(+どこぞの新興宗教のような「イタコ」設定w)


結局語ってるのは「自分」なんですよね。


対米従属へのスタンス
官僚組織との対峙
未来を見据えたビジョン


それでいて「自分が都知事だった時に、角栄のような政治家が国サイドにいれば…」などと言っちゃうのは(あとがき)、自分自身の「至らなさ」を告白してるようなもので、批判された角栄さんとしては苦笑するしかないでしょうな。(まあ全く歯牙にもかけてなかったようですが)


大きなビジョンを持ち、その達成のための戦略を描くことができ、実現のための手段・手法にも通じている(人たらしの面も含め)


「田中角栄」という政治家が稀有な存在だったのは間違いないでしょうがね。
(ロッキード事件の頃、国会中継のニュースなんか見ながら「悪い奴なんやなぁ」と思ってたのを覚えています。「愛と誠」のラストとかねw。
結局僕も踊らされてたんですかねぇ)
その能力と先見性の高さゆえにこそ、「ロッキード事件」の欺瞞を見抜くことができ、それゆえにこそ闘い続け、その姿勢そのものが「孤立」を呼ぶ…と言うのはなんとも言えない終盤です。


「小説的」な面白さもあり(女性との関係とか、子供への想いとか)、ちょっと構成や文体には馴染めないところは感じるんですが(わりと石原慎太郎作品にはそういう感じをもってます)、楽しめるし、考えさせられもする作品でもありました。


ま、真紀子さんは納得できんでしょうがねw。