鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「八月の六日間」

・八月の六日間
著者:北村薫
出版:角川書店

八月の六日間

八月の六日間



久しぶりの北村作品。
別に避けてたわけじゃないんですが
何となく新作が出ても手に取らなくなってたなぁ、と。まあそんなに多作ではないですがね。
一番の理由は「電子書籍化されない」ってとこでしょうか。「本」を偏愛している(本書でもそれは窺えます)作者らしい判断ですが、エンタメ系はドンドン電子書籍優先になってますね、僕の場合。主にはスペースの問題ですがw。
これが円紫シリーズの新作なら話は別なんですけどねぇ。こっちはさっぱり出てきませんから…。(同じようなポジションの作者が「宮部みゆき」です)



で、本書。
これも電子書籍じゃないんですけど、何か気になって、ふと購入してしまいました。金沢だと身近に「山歩き」する人がいるってのも理由でしょうか。僕自身は「勘弁」なんですがw。



読後、
「北村薫だなぁ」。
何か劇的なドラマが展開するわけじゃない。言って見れば登山をするアラフォー女性の姿を描いているだけ。
それでいて「何か」を感じさせるってのは、デビュー作以来の「北村薫ワールド」です。
「さりげなさ」にはドンドン磨きがかかってますね、ホント。



あえてドラマらしいドラマを挙げるとすれば、
「別れた男性とのケリのつけ方」
でしょうか。
ここを象徴するラストシーンは中々趣がありました。



でもそういった「色恋」に集約されない「何か」があるのも間違いありません、



<人は、無限の一瞬を生きる。自分だけでは、およそ何事もなし得ない。だが後から同じ道を歩いてくれる人がいる。それは大きなー慰めとは言わない、それ以上の救いだ。>



幼馴染との別れ、山で出会った人との縁、山道ですれ違った人との交情…



「山を歩く」というのはどこか「人生」にも重なるとでもいいましょうか。
特に主人公のように「独り」歩くことを選ぶ人にとっては…。



読み終わるとなんだか「山を」に行きたくなるような。
…なんてことは僕の場合は全くなく、
「いやあ、上手くて面白い本を読ませていただきました」
ってとこです。
本書の感想で、「あの装備はどうだろう(気軽すぎる)」ってのがありましたが
、そう言う視点で読む本じゃないんじゃないかなというのはありますね。(少なくとも僕の場合は)



初めて本作で「北村薫」に接した妻は過去作に手を出しています。
僕も久しぶりに円紫さんか覆面作家に会いたい気分になってます。
電子書籍化してくんないかなぁ。