鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「評価と贈与の経済学」

・評価と贈与の経済学
著者:岡田斗司夫FREEex、内田樹
出版:徳間ポケット



はてさて、この二人で話が合うんかいな?
最初の印象はそんなところ。
何か社会の先を行こうとしてる岡田氏に対して、内田氏は比較的保守寄りの印象があるからね。
ネットで可視化されるポジションによって社会的な評価が定まる「評価社会」なんて、「トンもない!」って言いそうな気がしたんだよね。内田さんの場合。



まあ「教育」「教師」の話のあたりではそういうトコもあったかなぁ。
大学の存在価値に疑念を呈し、有効な「教師像」として「スティーブ・ジョブズ」を提示した岡田氏に対して内田氏が反論するあたりはチョットした読みどころかも。(個人的に「教育」の分野に興味があるってのもあるけど)
内田氏の主張も分かるけどね。
社会の変遷や政治の右往左往に「教育」が翻弄されるようじゃ、「人を育てる」なんてことはできない。
いや全くその通り。
ただ「既得権益」化して、社会に対してしっかりと「説明」をすることを怠っている教育界に対する苛立ちのようなものがあることも認識して欲しいってのはあるな。「説明」をすることで自己認識が強化されるってのもあると思うし。そういうスタンスが欠けすぎてるってのが、僕の教育界に対する対する不満かな。
(教育にはもっと予算を回すべきだし、教師の社会的な地位をあげるべきだとは思ってる。この間あった退職金削減騒動なんか、あまりにも教師をバカにした話だと思ってます)



とは言え、大半は二人の意見は同じ方向を向いているし、互いに刺激し合うところもあったように読めた。
時代の先端を行くように思える「評価社会」が、前時代的社会像である「贈与社会」と通じるところがあるってのは、結構楽しい。
「信頼」を可視化するネットが、「贈与社会」欠点である「スピード感」を補い、ポスト資本主義の社会像として新たに「贈与社会」の可能性を拓く。(それは「評価社会」に通じる)
…っていうパーステクティブは、僕自身は「面白い」思ったけどね。



もっとも果たしてそれがどのような形で現実社会に影響を及ぼし、社会を変容させて行くのかってのは、まだチョットわからない。
ネット選挙が解禁されそうだけど、すぐにそれで何かが変わる…とも思えないしね。東浩紀氏が言うようなネット社会(一般意志2.0)も、一定のリアリティは感じるけど、概念的なものではあるだろう。
FREEexなんかも実験的なアクションとしての価値は評価できるけど、メインストリームにはナカナカなりえてないからね。(「勝間塾」をその同類として評価してるのは、ちょっと面白かった)



ただそういう「概念」が積み重なることで社会の何処かに変容が生じるっていうのはあるんじゃないか、と。
急激な変化ではなく、社会の大きな慣性に少しずつ影響を加えて行き、流れそのものに影響を加えて行くのに、こういう「概念」積み重ねってのは意味があると思うんだよね。
岡田氏や内田氏の活動ってのは、そういう視点から評価すべきものだと個人的には思っている。



まあ、時に性急な成果を求めたくもなるんだけどさw。。