サンデルが近著でビリー.・ビーンのことを批判していましたね。
「経済学の論理を野球に持ち込み、野球の魅力を損なってしまった」
まあそんな感じ。
しかもその理論を金持ち球団に使われることで、結局アスレチックの優位性は失われてしまっている、と。
これはある意味正しい。
「マネーボール」
この映画のラストに描かれているのは、正にその批判を裏付ける「事実」です。
ベーブ・ルースの呪いを解いた「レッド・ソックス」の優勝の背景にはビーンが導いた理論があります。
それを認めた上で、
「では、ビーンはどうすれば良かったんだろう?」
保守的な経験とロマンに支えられた球団作りをすべきだった?
その時代にもまた、金持ち球団は優秀な選手をかき集め、圧倒的な戦力を築き上げていました。
そういう球団を弱小球団が負かすことが面白い。
然り。
だからこその、「マネーボール」だったのですから。
本作の最後でビリーが選択する途は、合理的でも経済的でもなく、極めてロマンチックな選択肢です。
この話が映画として描かれるのは、この決断があってこそ、だと思います。
サンデルの指摘は的を射てる面があると思います。
それでも僕はビリーの選択は正しかったと思いたい。(野球の可能性を広げたという点でも)
少なくとも映画のビリーは映画の主人公に相応しい資格があると、僕は思いますよ。
倫理論は時に「現状維持」に偏る時があります。
「マネーボール」に関するサンデルの評価にはその気配を感じるんですけどねぇ。
まあ、何にせよ、楽しく見れました。