鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ポーカー・フェース」

・ポーカー・フェース
著者:沢木耕太郎
出版:新潮社(電子書籍)



「バーボン・ストリート」「チェーン・スモーキング」に続く沢木耕太郎のエッセイ集第三弾。
13篇が収められている。



まあ特段テーマが決まっているわけでもなく、書かれた時期にもバラつきがあって、そう言う意味では(前作までと同様)まとまりのない一冊。
だけどそこを「沢木耕太郎」という存在が、何だか一本の筋を通してくれている。
時事的なことにも触れてるんだけど、そのことで内容が古びない・・・ってところが特徴かなぁ。
これは多分、前二作を今読んでも同じように感じるのではないか、と。
逆にいえば、「沢木耕太郎」ってのは、古い世代に属する作家なのかもしれないけどね。
(実際、彼が本書で取り上げる作家たちは、そういう世代に属していて、沢木氏のポジションはその「最後の一人」って感じになる。これは伊集院静よりも強い印象として、個人的にはあるな)



だからこの作品はこれでいいし、その佇まいのようなものを楽しむというんでいいんじゃないかと思うよ。
ここで読者に贈られる「エッセイ」としての水準はものすごく高いと思うからね。



ただ一方で、もう少し時代の息吹を感じさせるエッセイも必要だという感じもあるなぁ。
例えば少し前に読んだ村上龍のエッセイ。
ボリュームには不満があるもののw、あれはそう言う「覚悟」を踏まえて書かれている。
10年後に読んだら、多分「?」って感じになっちゃうと思うけど、それはそれで覚悟の上なわけだ。
これまた「よし」。



まあ、どっちも楽しんでる・・・ってことですw。