鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「何が日本企業の成長を阻んでいるのか」

・何が日本企業の成長を阻んでいるのか ガバナンスが支える資本コスト経営
著者:山本績
出版:日本経済新聞出版社



ここんとこ、「資本コスト」について考えることが多いので、一度しっかりとした考え方を勉強しておこうと思って読んだ本。
「あんまり数式とかが飛び交うのは・・・」
と言うのも選択理由の一つだったんだけど、中盤はバンバンって感じでしたなw。
追いかけるのが難しいって感じもなかったけど。(厳密に言えば、「読み飛ばしても」・・・w)


本書の大きな主張は以下だと僕は読んだ。(誤読の可能性は大いにあるがw)


①今後の日本企業においては「ガバナンス」を機能させることが重要。
②「ガバナンス」をはかる上では、「資本コスト」を考えた経営を行う必要がある。


作者によれば、
「経営」は株主の総体としての意志を反映して行う必要があり、それを反映する指標として「資本コスト」が位置付けられる。
この意志に反した経営を行う経営陣にはストップをかける必要があり、その役目は「取締役会」が担っている。
それが「ガバナンス」である。
・・・ってな感じかなぁ。
ここら辺は僕の解釈(っつうか、簡略化)が入りすぎてるかもしれませんw。
ただ単なる数式・指標を追いかけるだけでなく、「経営」という実務における具体的な「役割」が論じられていて、そこが本書の面白さなんじゃないかと。
「資本コスト」から見た経営が、会計上の指標から見た経営と乖離するあたり(「収益が高い企業がいいわけじゃない」「自己資本の充実より有利子負債の方がプラスになることも」) 、自分が知りたかったことも丁寧に追いかけてくれてるしね。


まあ社会やマーケットが上昇局面にある時は、多少の「ムダ」はその流れの中で相殺されちゃうんだよな。
それが停滞や衰退局面に入ってくると、自己資本を戦略的・考課的に活用しない経営は、企業そのものの大きな損失をもたらしてしまう危険性がある。
「資本コスト」というのは、そういう局面にこそ使いこなす必要がある考え方なんだろうね。
数値そのものが重要なのではなく、その指標は経営方針を反映した上で設定される。
その「経営方針の反映」というところにこそ、一番の意味があるのかもしれない。


まあそれにしても作者が求める「ガバナンス」の実現性はどうなんだろうねぇ。
大王製紙やオリンパスなんかの例をみると、確かにね「ガバナンス」の重要性ってのは見過ごせないポイントだと思うけど、一方で現実との乖離を思うと・・・。
そういう意味じゃ、今後の東電の経営組織がどうなるか、その成否はどう評価されるか。
ここら辺は大きいかもしれない。
電機業界の決算を見ても、「このままじゃぁ」って気運は、確かに高まってるようにも思えるからね。


もしかしたら曲がり角はそこまできてるかも・・・。