「信長の棺」の作者による「忠臣蔵」。
僕は「忠臣蔵」が好きなんだよねぇ。
日本の歴史上の人物でも、「大石内蔵助」は5本の指に入るお気に入り。
「昼行灯が実は・・・」
ってのがいいんだけど、これってまあヒーローもの好きと同根かな?w
なもんで、実は「信長の棺」は個人的にはもう一つ肌が合わなかった覚えもあるんだけど、つい文庫3冊をまとめ買いしてしまいました。
ま、所詮物語は「忠臣蔵」なんだから、それはそれで楽しめるだろうってのはあったしねw。
この作者の場合、処女作以来、物語の中核に歴史上の「謎」をすえ、その「謎解き」をストーリーに絡ませるというのが特徴となっている。
「忠臣蔵」における「謎」と言えば、何と言っても「浅野内匠頭の刃傷の理由」。
これがサッパリ分からないってのが「歴史」における大きな謎だろう。
これだけ語り尽くされ、研究されていて分かんないんだから、実証的には「謎」のままなんだろうなぁ。
作者はそこに大胆に推理を働かせ、それを物語に織り込んでいる。
その推理の行き着く先が、
「朝廷との関係。特に桂昌院の従一位昇階問題との関連」。
これは確かに「ほお?」って感じだな。
少なくとも僕はここを刃傷の原因として指摘した小説は読んだ事はなかった。
時期的なものや重要性、そもそも刃傷がおきたのが、勅使が江戸城に来たタイミングと言う「朝廷」との関連性などを考え合わすと、「なるほど、いいとこ目を付けたなぁ」って感じがする。
一つの「説」として打ち出すに値すると思ったよ。
ただ「小説」としてはねぇ。
文庫3冊はちょっと長すぎるんじゃないかなぁ。
「謎解き」でこれだけ引っ張るのは、ちと辛い。
ストーリー構成上も、桂昌院の昇階問題が片付いた後に仇討ちの実行は位置づけられるだけに、ここに黒幕(柳沢吉保)が積極関与しない展開は、何だか緊迫感に欠けるところがある。
「忠臣蔵」というフレームワークが確立しているから最後まで読み通せたけど、ここはもう一工夫して欲しかったなぁ。
割といい伏線を引いてるとこもあるのに(女密偵との関係とか)、その回収がお座なりなのが勿体ないんだよね。
後半はここら辺をストーリーに絡めて、緊張感を高める手もあったと思うんだけどさ。
何か全般的に淡白な感じがして、惜しかった。
<ましてや、吉良邸が頑強に補強され、まるで鉄壁の砦だったなどというのは、噴飯物の巷談である。>(P.248)
と「四十七人の刺客」に当てつけるような事を書いてるから、作者は自分自身の歴史調査には自信を持ってるんだと思うよ。
でも「小説」ってのは面白さが問われるってのもあるからねぇ。
残念ながらその点では「四十七人の刺客」の方が上な気がしたんだけど、どんなもんでしょう?
まあ12月に「忠臣蔵」を読む。
それはそれではまるから、いいんだけどね。