鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「漂流巌流島」

・漂流巌流島
著者:高井忍
出版:創元推理文庫



「柳生十兵衛秘剣考」が思いの外、面白かったので、前作も購入。
作者のデビュー作になる。



スタイルとしては、監督と脚本家が時代劇のネタについて議論する中から日本歴史上の事件の「謎」を解き明かすというもので、明らかに鯨統一郎の「邪馬台国はどこですか?」スタイル。
映画監督(探偵役)と脚本家というコンビにすることで、
「ここで解き明かされたネタが真実かどうかは分かりませんぜ」(面白い映画を作るのが目的だから)
って「エクスキューズ」してるところが、逆に作品としての自由度を高めてるってトコロはあるだろう。
水準はかなり高いと思うよ。



取り上げられる事件は4つ。
「巌流島の決闘」
「赤穂浪士討ち入り」
「新撰組池田屋事件」
「鍵屋の辻の仇討ち」
「動機探り」になる「赤穂浪士事件」「池田屋事件」、トリッキーな謎解きの「巌流島」「鍵屋の辻」・・・ってトコかな?
「柳生十兵衛秘剣考」が、キャラ重視で、登場人物達の一般的イメージに乗っかった形でストーリーを組み上げてるのに比べると、本作は「実は・・・」という感じで、虚像崩しの意味合いも強い。
ここら辺は「好み」の問題だろうけど、個人的には「秘剣考」のほうが楽しめた感じはある。
もっとも「推理小説」としては、本作の方が水準が高いとも思うけどね。



綾辻・有栖川あたりが褒めてる作家だから実力は十分。
(今のところ)短編主体、ってのは僕の好みでもある。
是非ともコンスタントに作品を発表して楽しませて欲しいと思う。



この水準を維持するのは大変だろうけど、そこら辺、読者はワガママなもんですw。