鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「MEDIA MAKERS」

・MEDIA MAKERS 社会が動く「影響力」の正体
著者:田端信太郎
出版:宣伝会議(Kindle版)



メディア論は最近個人的に気になってるところなので、どっかの書評かなにかで目について(ちきりん氏のブログだったかも、またしてもw)購入しておいた作品。
Kindleストアにあると、こういう手軽さはいいですな。
積読本(電子書籍Ver)もすぐに増えちゃうってのもあるけどw。



ただ読んでみると、趣味的な「メディア論」としてというよりは、自分の仕事に関連づけて刺激/参考になる部分が思った以上に多くて、予想以上に意義深い読書体験になった。随分と考えさせられたよ。



作者は第2章(一般ビジネスパーソンもメディアの知識が必要な時代)でこのように論じている。



<「メディア」と「ファイナンス」には、構造的に共通点が多いと思ってきました。まず、第一に両者とも社会において、大変「特殊な」フィクションを果たしている、ということです。>
<では、どこが特殊なのでしょうか。それは両者とも実体がない、情報という無形物を扱っているということ。そして「対象への信頼」が鍵に鳴っている、ということです。>



勿論、僕の仕事が全くこの構図に重なる訳ではないけど、顧客との最初の接点の時点においては「無形物」を取り扱っていること、そこにおいては「信頼」が重要なキーファクターになることなんかは、極めて重要なポイントだと考えている。
作者はここから「信頼」の上に成立する「予言の自己実現力」について論を展開して行くんだけど、これなんか実に奥深いね。「ブランド」の持つ「マジック」の最たるモノは、正にコレなんじゃないかと思う。
「予言自己実現力」を持つが故にメディアには高い倫理性が求められる(メディアにおいては「編集権の独立」がポイントとなる)というのは確かだと思うが、これは「ブランド」全般に言えることだよね。
そしてその「倫理性」が、理想的な哲学によって求められるだけでなく、それを欠くことが「信頼」の崩壊に繋がり、そのことが「予言実現力」を損なわせ、「ブランド」を毀損する・・・という極めてビジネス的にも重要な要請となること。
いやはや、深いですわ。
(「ビジネスの論理」と「倫理性」は反するものと囚われがちだけど(内田樹氏の論ではおなじみw)、現実的なビジネスの現状は決してそうじゃないことがココから窺える。これは僕の実感でもあるよ。
勿論、そこに緊張関係があることは、メディアに置ける「編集権の独立」を巡る事案が今に至るまで耐えないことでも明らかだけどね)



この類似性を考えると、現在メディアが直面している状況が、果たして僕が属している業界にも訪れるかどうかが気になるところ。
・・・うーん、すぐに「来る」かもしれないし、まだ時間があるかもしれないし、「来ない」かも・・・。
ここら辺はメディアとの「相違点」が影響していると言えるかな?
「ノンリニア化」っていうのはチョット難しいような気がするんだよ。



ただ時代の流れは思っている以上に早く、(作者も指摘している通り)テクノロジーが業界のアーキテクチャ(環境設計)を一変してしまう可能性は軽視できない。
その気配は確かにあるのも事実ではある。
その「可能性」を念頭において、自分たちの「ブランド」力を考慮しながら「今」のアクションを考える。
そんなことを本書は考えさせてくれた。
一読の価値は間違いなくある作品だと思うね。