鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

納得感はありましたよ:読書録「イギリス人アナリストだからわかった日本の『強み』『弱み』」

・イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」
著者:デービッド・アトキンソン
出版:講談社+α新書(Kindle版)

イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」 (講談社+α新書)

イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」 (講談社+α新書)


NewsPickで星野リゾートの社長と対談しているのが面白くて、購入。
「日本の国宝を守る」の続編…だけど、主張の論点はもっと広いです。
「強み」「弱み」を他国との比較ではなく…ってのは良いと思いますが、この題名は比較論ばやりの日本の風潮に乗っかってはいます。(分かってやってるんですが)
しかし納得感はありましたよ。「今」という時点で、本当に考えなきゃいけないこと…って感じです。


作者の主張はこんな感じですかね。


日本の労働者は優秀。
ただし戦後の「高度成長」は「奇跡」ではなく、戦前に高い水準まで達していた経済基盤の上に、「人口増加」が大きく寄与したと考えるべき。
一方、「生産性」という点では厳しく、「職人的」スタンスや「真面目さ」が「生産性」を損なっている面もある。
それ以上に「経営者」の質が低い。客観的な指標(数字)を軽んじる経営は、「人口オーナス」があればこそ。
また人口オーナスは「現状のやり方」を良しとする文化となり、「面倒くさい文化」(「やらない」理由ばかり探す等)となって既得権益の保持の風潮を強めている。
インテレ層(指導階級)の Woolly thinking(ふわっとした思考)もかなり問題。客観的な事実や数字に依拠した論理的思考や意見交換がされておらず、そのため解決策がしっかりとしたものとならない。
庶民レベルの強すぎる個人主義も問題である。
etc、etc


経営者の問題についてはクーリエでも、


<物事を数字で評価せず、曖昧な言葉を掲げて経営を続けたところで、何ヶ月経っても会社は成長しません。日本企業のこうしたスタイルは、私からすると「経営」というより、ただの「遊び」に見えます。>


と痛烈な批判をしてましたが、否定はしきれません。
「生産性」のところもねぇ。
「経営者」の問題もあるけど、「職人的」価値観というか、「完璧主義」というか、分かちゃいるけど改めて…って感じです。


インテレ層の「Woolly thinking」の問題も「然り」なんですが、作者の母国での「EU離脱」騒動を見ると、これは単純にインテレ層問題で片付けるわけにはいかないなとも思います。
インテレ層の言葉が届かなくなっている(大衆の「気分」と齟齬をきたしている)という意味で。
「EU離脱」については作者の感想・分析を聞いてみたいですね。余談ながら。


女性の活躍や、観光業への提言等、他にも興味深い指摘が含まれています。
自分たちが誤解している「強み」、認識してない「強み」、「弱み」をどうやって「強み」に変えていくか等々
今まで読んだ作者の作品では一番刺激を受けたし、考えさせられもしました。
もちろん「考えてる」だけじゃなくて、「行動」に移さなきゃいけないんですがね。