鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「大いなる眠り」

・大いなる眠り
著者:レイモンド・チャンドラー 訳:村上春樹
出版:早川書房



これで村上春樹はレイモンド・チャンドラーの代表作を全て訳したことになる。(「大いなる眠り」「さらば愛しき女よ」「長い眠り」)
他に「かわいい女」も訳してるから、チャンドラーの長編すべてを村上春樹訳で読めるのも、夢じゃなさそうだね。
ノーベル文学賞なんか獲っちゃって、忙しくなり過ぎないことを祈ります。(キャラとしては大丈夫そうだけどw)



この作品は長く双葉十三郎訳で親しんできたけど、新訳で読むと(「かわいい女」もそうだったけど)作品の性的なスキャンダル性が明確化するね。
ま、元々そう言う作品だったんだけどさw。
その意味でも新訳の意義はあると思うなぁ。
村上春樹の訳は、そこは浮き出させながら、マーロウの紳士性は揺るがさない品がある。田中小実昌訳はチョットそこがねw。



しかし読むたびに思うけど、ストーリーが混み合ってて、構成のバランスが悪いんだよなぁ。
突然登場するシルバー・ウィッグが、ラストでヒロイン扱いになるのは、やっぱ変だろう。ここは映画(「三つ数えろ」)の判断も非難出来ないと思うよ。



それが分かってて、それでも何度も読み返してしまう。
これがチャンドラーが古典であり、マーロウがヒーローであるが所以だろう。
新訳は改めてそれを教えてくれたし、次代にそれを伝える役割をしっかり果たしてくれると思う。
固定化したハードボイルド・ファン以外の層にも、「村上春樹」はアピールしてくれるからねぇ。



個人的には是非村上春樹訳のチャンドラーは電子書籍にして欲しい。
そしたら思い立った時に、すぐ読み返せるように、iPhoneかKindleに全作取り込むんだけどなぁ。
割と早川は電子書籍に手を出してるから、期待は持てる?
それとも村上春樹がNGかな?