鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「(日本人)」

・(日本人)
著者:橘玲
出版:幻冬舎



ネオリベもしくはネオリバタリアンのポジションに立つ作者による日本人論。
武士道や共同体重視と言った伝統的な日本人論を、「日本人の特殊性」でなく、アジア的価値観として批判しつつ(それが「( )」になるわけだ)、世俗性が高いことを日本人の特性として暴き、そこから新たな日本人論を展開している。
この作者の作品は割と「身も蓋もない」って気分にさせられるんだけどw、本書も同様。
でも視野の広さや取り上げるエリアの多彩さから、本書が作者の代表作と言ってもいいだろう。
いや、実に刺激的でしたよ。



伝統的な日本人論を分析し、その向こうに世俗性の高さから現れる日本人の姿を描く前半部分も非常に面白い。
個人的にはこの作者の作品など読んでよく知っている視点だったけど、あまり読んだことない人にはココだけでもかなり刺激的な内容だろう。
震災以降の日本の現状は、このスタンスを強く裏付けているような状況でもあるしね。



後半では、そこから日本あるいは日本人の進むべき方向性について論じられてる。
その中でも橋下徹のスタンスを論じているパートはなかなか面白い。
毀誉褒貶は色々あるけど、やはり彼が今注目される政治家であることは間違いない。
ここで加えられている分析はかなり的を射てると思うよ。



ネオリベとして作者が指し示している方向性は、国家という枠組みは維持しつつも、その中に共同体を構成するというあり方かな。
ただこの共同体が伝統的な地縁や血縁ではなく、個人の集合体であるという点が作者のスタンス。
伽藍ではなく、バザールというわけだ。



僕自身は多くの点で作者の考え方に賛同しながらも、ここまでは合理性を徹底できないっ感じかな。
伝統的な価値観や共同体、それを重視する価値観などを、僕もまた重視するようなところがあるからね。
まぁそれが僕が古い世代だということの証明なのかもしれないけどw。
それでも、 Facebookやtwitterを使っていると、個人の集合体としての共同体ってイメージも何となく浮かんでくる。
そこに新しい社会のあり方が見えてくるのかもしれないなぁ、とも思わないでもないけどね。



興味深く、刺激的な作品。
一読に値すると思います。