鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

現場路線で行くのかしら?:読書録「消えた警官」

・消えた警官

著者:安東能明

出版:新潮文庫

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「撃てない警官」シリーズ最新刊。

チャラいが凄腕の刑事(上河内)が前作から登場しての2作目。

「失踪した警官」を縦糸とした連作短編となっています。

 


上河内の登場で「刑事ドラマ」としての展開は充実した一方で、そもそもの「警察内部もの」としての側面は薄くなってきたような…。

本作にも主人公(柴崎)の仇敵(中田)は登場し、何やら妨害工作は仕掛けてるらしいものの、対立軸はメインストーリーの添え物にとどまっています。

 


取り上げられている事件は割と時事的であり、「深み」も感じさせるので、「刑事もの」としてはレベルが高いと思うんですが、そもそもの「撃てない警官」としての独自性が失われているのはどうなのか…。

「隠蔽捜査」の竜崎は神奈川県警の刑事部長となり、現場にありながらも警察政治にも関わっていく(ちょっと無双になり過ぎてる感はあるにせよw)方向に踏み出していますが、柴崎の方は「迷走中」って感じもしなくもないです。

 


「刑事路線」で行くのも悪くはないんですが、個人的には警察内部の政治対決にも踏み込んでほしい気分はあるんですけどね。

 


ま、いずれにしても次作が楽しみではあります。

「梅木は論外やわ〜」と息子:コミック「あした死ぬには、」

う〜ん、どこで紹介されてたのか?

朝日の書評じゃなかったような気がするんだけど…

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42歳、独身、映画宣伝会社勤務。

このヒロインを中心に、同級生(パート主婦、引きこもり)のエピソードが挟まれる形式になっています。

 


割と女性特有な部分(身体的、心理的)なトコロにも踏み込んだ内容になってて、そこら辺は、

「分かるような、分からないような」

 


でもある年齢を迎えた時に、身体的にも精神的にも「曲がり角」を意識するっていうのは、自分自身の経験からも理解はできます。

(個人的には、東日本大震災のころ、心臓の手術をしたころ、大阪に転居したころ…あたり。On The Wayの部分もあります)

その「あり様」がチョット違うのかもね。

 


読んだ息子の感想は、ヒロインの職場の同僚(男性)の「行けてなさ」ぶりに。

まあ、そうなんだけど、自分にそういう面がないとも言い切れずw、「若いって残酷やなぁ」なんて思ったりもして…。

(「梅木」には作者も自分に通じるものを感じる様です。ま、パワポは使えますけどね、僕はw)

 


地味な作品。

でも、評価されるのは納得でした。

モラルはない(殺し屋なので):読書録「殺し屋、やってます。」

・殺し屋、やってます。

著者:石持浅海

出版:文春文庫

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表の稼業が経営コンサルタントの「殺し屋」が、依頼された案件にある「ちょっとした謎」を解く…と言うスタイルの短編集。(7篇収録。うち1篇は主人公が「殺し屋」じゃないんで、番外編と言ってもいいかも)

「殺し」が扱われてるけど、解く謎は「日常系」ってのが面白いトコです。

 


「殺し屋」らしく、モラルはありませんw。

仕事を引き受けるにあたっては動機等を深掘りしないことを信条としているので、「謎」を解くのは(基本的に)「仕事の後」。

殺しちゃってるんですよね。

まあ、殺されるには殺されるだけの…ってトコもあるんですが、見合うだけの「悪さ」をターゲットがしてるかどうかは…。

職業意識とモラルのなさ。

ここら辺を受け入れれるかどうか、ってのはあるかもしれません。

(ってまあ、そんな人は買わないか。こんな題名の本w)

 


僕は面白く読みました。

「短編」ってのもちょうど良かったです。

 


続編が単行本で発売中。

そっちに手を出すかどうかは、微妙なとこw。

まあ、結論は身も蓋も…:読書録「しらふで生きる」

・しらふで生きる 大酒飲みの決断

著者:町田康

出版:幻冬舎

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30年間毎日飲み続けた著者が、4年間禁酒を続けている。

…ことについて語った作品。

結構、評判になってる…ような気がしますw。


ただまあ、肝心の「理由」は「よく分かんない」んですよねぇ。

酔っ払って、高速道路に放り出しちゃったみたいなんでw。

だから「理由」「キッカケ」みたいなものは曖昧なまま、「どう言う考えで続けることができているのか」「その経緯はどうなのか」…あたりが、屁理屈っぽく、グダグダと述べられています。


「素面でも酔っ払いの戯言は言えるってことか?」


とか、途中では呆れちゃったくらいw。

で、結論。


<酒を飲まないからといってあまり賢くない人が賢くなる訳ではない。けれども酒を飲むと賢い人が阿呆になる。そして阿呆はもっと阿呆になる。どうやらそんなことのようだ。>


いや、まあそうなんですけど。

 

以前、2週間ほど「禁酒」せざるを得なくなったことがあります。営業の接待なんかも連日入ってた時期なんで、やむなく「酒を飲まずに同席」したんですが、結果分かったのは、


①酔っ払いは同じことを何度も喋っている

②話してる内容の論理性は、時間と共に低下する

③2次会で重要なことは発生しない


まあ町田さんも言ってる通り、「仲間意識」の醸成には役立つところはあるのは確かですがね。

(飲み会の席で仕事の話が進むことが全くないか…と言うと、そうでもない。

けど、「接待」なんかは複数名同士で持たれるケースが多いし、クリティカルな決定権者が参加しているとは限らない。さらに日本人は「酔いやすい人が多い」ってことから、「仲良くなる」ってのが最大目的になってるケースが、結構多い気がします)

 

 

僕自身は「禁酒」をするつもりは(今のところ)ありません。

ただ以前よりアルコールに弱くなったことは認識してますし、「酔っ払う」ことを「楽しい」と思う気持ちも、ここのところ減退しています。

「美味しいお酒を、<理性を失わない範囲>で楽しむ」

今のスタンスはコレですかね。

(割とそう言う向きが世間でも出てきてる気もしてるんですが、どうでしょう?)

 

本書については「How To」として読むより、「禁酒」と言うことをネタにした「エンタメ本」として読むのが正解だと思います。

そう言う意味じゃ、楽しく読めますよ。

悪魔の取引…?:映画評「アルキメデスの大戦」

AppleTVのラインナップで何となく目についちゃって、ポチッとレンタルw。

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まだ原作は連載が続いてるはず。

それをどう言う風に…と思ったら、

「なるほどね」。


作品としては「オチがついた」形になってます。

原作は読んでないんで比較はできませんが、個人的には「上手くまとめたなぁ」って印象です。


もっとも主人公の「数字で世界を把握する」と言う思想からすると、最後の「決断」はあまりにも「概念的」過ぎる感じもありますけどね。(ある意味「陶酔的」ですらある)

突っ込めば、それこそが「やってはいけない」ことなんじゃないか、とも。

そう言う意味じゃ、割り切れないものも残りました。

(まあ、この題材だと、どうやってもスッキリしないんですが)


ちなみに「最初の5分」(大和撃沈)は、さすがに迫力があります。

あり過ぎて、最後のカットがあまりにも「詩的」過ぎるのもまた…。

 

 

PS  「永遠のゼロ」も作った山崎監督のインタビューはこれ。


<エンターテインメントで〝反戦〟打ち出す 「アルキメデスの大戦」の山崎貴監督>

https://www.jiji.com/sp/v4?id=201907aru-yama0002


どちらも「ベタベタの反戦映画」と思ってるって言うのは、なるほど…なんですが、ちょっと陶酔的なところがあって、それが引っかかるってのが僕の印象ですかね。

リアルに悲惨な物語を提供すべき…とも思いませんが。

 

#映画評

#アルキメデスの大戦

ストーリーは完全にミニシアター系:映画評「失くした体」

またもやNetflixオリジナルw。

フランスのアニメです。

アカデミー賞候補に入ってるのを知って、観てみる気になりました。

1時間半、ないですしね。

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ストーリーは「ミニシアター」っぽい、地味で曖昧なところがあるけど、味わい深い感じ。

その「物語」を、主人公から事故で切り離されてしまった「右手」が<回想>しつつ、身体(=主人公)を探すという構成です。

まあ「実写」でやったらグロ過ぎるからアニメで…ってのもありますが、それにしてはリアル系のアニメーション表現ではあります。(原作は漫画の様ですね)

 


アニメとしてはまず、この「右手目線」での表現が凄く興味深いってのがありますかね。

実験的な表現も交えてるんですが、それが「右手目線」ということで、割と受け入れやすくなっているというかw。

一方で「人間パート」の方も、繊細な物語を支えるだけの細かい表現を演出していて、なかなか良い感じです。

 


全体として、「面白かった」というには、もうちょっと何か…って個人的には感じるんですが、それは「物語性」の強い映像に僕自身が毒されすぎてるからかもしれません。(「アニメ」というジャンルだと尚更に)

賞レースがどうなるかはわかりませんが、「映画」として(敢えて言えば「フランス映画」として)意欲的で、完成度も高い作品なんじゃないでしょうか。

 


主人公が最後に辿り着くところ。そしてヒロインがそれを見つけるところ。

僕は好きですよ。

「こう来るか〜」って感じ:ドラマ「ドラキュラ」

またもやNetflixオリジナル。

ベネディクト・カンバーバッチの「シャーロック」の製作陣によるブラム・ストーカー「ドラキュラ」の翻訳です。

1話1時間半で3話で構成されています。

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正直最初は、

「う〜ん、このギトギトおっさん系の<ドラキュラ>はどうよ…」

だったんですが(「バンパネラ」と来れば「エドガー」を思い出す僕としてはw)、

1話の終盤から、「お?」

2話で、「おお〜」

3話で、「こう来るか〜」

ってな感じでした。

意外にも着地点が「ポーの一族」にも通じると申しますか…。(そりゃ言い過ぎかw)

 


1話は原作を忠実に〜この製作陣らしい展開へ。

もっとも緊張感とユーモアがあるのが「2話」。ここのドラキュラ伯爵とヴァン・ヘルシングの「対決」は絶品。

3話は設定は無茶苦茶面白いんだけど、尺が足りないかな。これは「ルーシー」の物語と「ヴァン・ヘルシング」との対決を分けて1話ずつにでもすればよかったのに。

 


続編

…はないかなぁ。実に綺麗に収まってますからね。

もっとも「シャーロック」の製作陣だから、「やる」となったら、どーとでも「屁理屈」考えそうな気もするけどw。

あるなら、また「おっさんドラキュラ」に是非お会いしたい!

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なんにせよ、予想以上に楽しませてもらいました。

バンパイア好きならオススメです。(結構グロですがね)

 

PS  原作を読んでると、より楽しめるのは確か。

…が、あれを読むのは結構しんどいかもw。

となれば、コッポラの「ドラキュラ」を見ておくか、あるいはこの「ネタバレ」を読んでおくか。

事前知識なしでも楽しめる映画ですが、時間があるようでしたら是非。

 


<原作ネタバレ>

https://rhinoos.xyz/archives/24754.html