鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「モダンタイムス」

・モダンタイムス<上・下>
著者:伊坂幸太郎
出版:講談社文庫



一番驚いたのは、「魔王」のストレートな続編だったこと。



いや、舞台設定が「魔王」の50年後ってのは知ってたんで、それなりのつながりはあると思っていた。
世界観に前作と共通なものがあったり、それとなく前作の「その後」がほのめかされたり・・・
くらいは予想してたんだけど、まさかここまでつながってるとは。
「ほのめかし」どころか前作の「その後」は本作の重要なファクターになってるし、前作のキャラもバンバン出てくるし(みんな長生きw)、何より前作のある種の「決着」が本作では着くんだよね。
これは嬉しい誤算。
でも「魔王」を読んでないと、ちょっと着いて行けないトコあるよ、これは。



作品としては「ゴールデンスランバー」「魔王」よりもエンターテインメント寄りだろうね。
まあ伊坂作品はどれも面白いんだけど、「ゴールデンスランバー」や「魔王」にはスッキリしないところがあったからなぁ。
それに比べると、本作は結構読後感がスッキリしている。
全てが解決した訳じゃないことは同様なんだけど、少なくとも主人公の「選択」はしっかりされてるからね。
ここがだいぶ印象を変えてるんじゃないかな。
漫画雑誌(モーニング)に連載された、ってのもあるだろうけど。
(あまりにもスッキリし過ぎで「深み」がない・・・って見方もあると思うし、分からなくもない。
でも個人的には(エンターテインメントとして)こっちのほうが好ましいな)



先に読んだ妻は、
「拷問シーンが多いのがどうも・・・」
って言ってたけど、確かにそれはあるかなぁ。
ユーモラスではあるけど、怖いのは確かだからね。



僕としては「50年後」という設定なのに、あまりにも社会が変わってないのが気になった。
その分、「分かりやすい」ってのはあるんだけど、もうちょっと変わるんじゃないかね、「50年」も経てば。
「50年前」のことを考えると、ちょっとこの停滞感は・・・って思うんだけど。



個人的には「奥さん」のキャラの立ちっぷりが好きだな。
「怖い」っちゃあ怖いけど、格好いいよ、コレは。
ラストは結局、
「All we need is LOVE」
あるいは
「ピース」。
「単純すぎる」って意見もあるだろうけど、僕は好きだよ、このラスト。



「魔王」とセットでオススメです。