鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

改めて「働き方の変革」を考える:読書録「ワーク・スマート」

・ワークスマート  チームとテクノロジーが「できる」を増やす
著者:岩水水樹
出版:中央公論新社


新しい年度が始まるにあたって、改めて「働き方の変革」、特に「女性の活躍推進」につながる働き方変革について考える必要性を感じ、手に取った本。
作者はGoogleの日本法人の女性役員で、女性の活躍推進を取り扱う"Women Will"という活動を牽引している方。この「Women Will」の提言内容やwebのツールが素晴らしかったんで興味を覚えたってのもあります。


基本的な主張は副題の通り、「テクノロジー」と「チーム」が生産性の高い働きを導くと言うもの。
その「テクノロジー」としてどう言うものを、どんな風に職場や生活に導入していくのか、あるいは生産性を高めるための「チーム」というのはどういうもので、その組成やマネジメント、そのメンバーの考え方はどんな風であるべきなのか。
そう言ったことが、Googleでの経験や、「Women Will」での取り組みを背景として論じられています。
「チーム」の文化については、Google関連の他の書籍(例えば「How Google Works」)なんかにも重なりますし(「サイコロジカル・セイフティ」についてはそちらで既に紹介されています)、テクノロジーに関してはもっと詳しいHow To本が沢山あります。
ただそれを単に「紹介」するのではなく、「Women Will」での実践例を踏まえ、日本の、特に「女性の活躍推進」に悩み、取り組んでいる人たちの視点を通して再整理したところに本書の価値はあります。
僕としてはもうちょっとHow To的なノリを期待してたんですが、意外に考え方やスタンスみたいなところを、データをベースにして論じているパーツが多いのも、そう言うところを変えていかないと、結局は定着しない…という考えがあるからでしょうね。
ま、分からなくもないです。


まずは「ビジョン」と「ミッション」。
「仕事」をする上においてはココがスタート。それを踏まえた上で「目的」「目標」が設定される。
その「目的」「目標」の達成のために「チーム」がワークするのだが、ビジョン・ミッションが高ければ高いほど、「チーム」のワークは「作業」レベルを離れ、「クリエイビリティ」が求められるようになる。「チーム」がクリエイティブであるためには、そこに「自律」と「自由」が必要であり、そのためには「失敗」を許容できるような安心できる信頼感関係(サイコロジカル・セイフティ)が「チーム」内になければいけない。
…「考え方」や「スタンス」についてはここら辺がベースでしょうか。これは別に「女性の活躍推進」に限った話ではないですけどね。


それを踏まえて、「女性の活躍」を推進できるような「チーム」となるためには、多様性を許容し、同質性に甘えないようなメンバー・上司・組織、あるいは家族の「考え方の変革」が必要であるし、時間的制約から解放されるためのテクノロジーを活用した「ワーク・スマート」への取組みが求められる。
…「女性の活躍推進」を視野においた主張はこの部分。
目新しいことが言われているわけじゃありません。でも「出来てるか?」と問われると、「…」。


スケジューラーの活用や会議ルールの設定等、「テクノロジー」やノウハウの紹介の部分もタメになるし、興味深いです。
でもそれ以上に、「働き方の変革」そのものの「あり方」を、今の日本の「現状」を踏まえ、かつ「女性目線」で整理し直した、ナカナカの好著だと、個人的には思いました。
「Women Will」と併せて手に取る価値はあるんじゃないか、と。
ライフハック」みたいな形での「効率化」を組織として進めていくには色々なハードルがありますが、「女性の活躍推進」というゴールを共有することで、一歩ずつ前進していくことができるし、していく必要がある。
…そんな風に考えてるんですが、どうでしょう?