鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「風の帰る場所」

・風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡
著者:宮崎駿 インタビュアー:渋谷陽一
出版:rockin'on



<僕自身は「魔女の宅急便」を作らなくても、もう自分でなんか一種、四角形ができたなあっていう感じがあってね。「カリオストロ」と「ナウシカ」と「ラピュタ」と「トトロ」をやったら、ある時期までやりたいと思ってたことに一応全部手を出せたっていう感じがあったんですよ。>(P.310)



何度か、本書の中で宮崎氏は同じようなことを口にしている。
「ふーん」
と思うとともに、納得できるものが自分の中にはある。
「アニメーション」という枠組みにおいては確かにこの4作こそが「王道」かもしれない。
と、同時にそこからはみ出るところに宮崎氏の本領が発揮されたとも言えるかな?



「子供のためのアニメ」という自縛を解いた「紅の豚」
漫画版「ナウシカ」の完結を受けて自身の深化した思想の集大成を打ち出した「もののけ姫」
自在な想像力を解放した「千と千尋の神隠し」
「戦争」と「職人」という題材を取り上げた「遺言」としての「風立ちぬ」



4作の完成度は認めながら(そして僕も大好きなんだけどね)、それ以降の作品がなければ宮崎駿氏は単なる「アニメ職人」で終わったかもしれない。
ま、それはそれで宮崎氏にとっては「本望」だったかもしれないけどねw。



秋に本作の続きとなるインタビュー集が出版されるとのことなので、「どうしようかな」と思ってたんだけど、その後の「引退発言」。
これで読んでみる気になった。
岡田斗司夫が宮崎駿氏の引退宣言の「解説」の中で渋谷氏のインタビューを揶揄してたけど、まあ言われても仕方ないってのはあるわな。
表現者は結局は作品の中で語るもの。
それ以外の「語り」は、表現者自身の発言も含めて副次的なものでしかないだろう。
(鈴木氏のインタビュー集の感想にも書いたけど)ある種の「決めつけ」をもってインタビューに臨む渋谷氏のインタビューは、「構図」は明確なモノの、面白味には欠ける部分があるし、「Something else」が生まれてこない。
そのことは宮崎氏も鈴木氏も認識しつつ、それでも応え続けるのは、その「決めつけ」がある程度的を射てるのと、インタビュー現場での打ち返しの俊敏さにあるんじゃないかね。
そういう意味で、「しょうがねぇなぁ」と思いつつ、楽しいひとときはもたらしてくれた。



さて、秋のインタビュー集はどうなるかな?
「引退宣言」以降の新しいインタビューが加わってると面白いんだけど。
(「文化人にはならない」と言い切った宮崎氏はこれ以上のインタビューには応えないかもしれないとも思うが)
「宮崎作品が何を語っているか」
それは別に作品を見ればいいから、いいんだよね。
ただ偏屈なおっさんが、何を考えながら生きているのか。
それを知るのが面白いんだよw。
本書もまあ、そういうモンですわ。