・世界で勝負する仕事術 最先端ITに挑むエンジニアの激走記
著者:竹内健
出版:幻冬舎新書(電子書籍)
エルピーダの破綻が報じられた時、この作者が書いた記事(ブログかな?)を読んだ覚えがある。
報道の中で「エルピーダのDRAMの過剰品質が破綻の一因」と報じられていたことに対する反論で、半導体ビジネスについて分かりやすく論じながら、「問題はマーケットの動きを読み損ねた経営判断」と断じていた(ように思うw)。
この時のクレバーな切り口が記憶に残ってて、書評ブログで紹介されていたのを読んで、電子書籍でDLした。
書評は好意的なものが多かったけど、確かに面白く、読み応えもあった。
エンジニアの出身者のグローバルビジネス体験記みたいなものだけど、内容的にはエンジニアに限った話ではないと思うよ。
作者も「文系の人たちに向けても書いたつもり」って書いてたけど、確かに参考になることは多々あった。
基本的には「体験記」として読むのがいいのかな。
理系の大学院から「東芝」に就職してフラッシュメモリの黎明期にたずさわり、その後、理系ながらスタンフォードに留学してMBAを取得。
帰国後は隆盛期を迎えた「フラッシュメモリ事業」の舵取りを東芝で取り、その後、東大に転身。
研究所で企業提携による新規技術のビジネス化を目指している。
まあ普通の「エンジニア」じゃあないw。
ただ日本の常識じゃ「異端」な作者の言う履歴が、グローバルビジネスの場においては決してそうでもない・・・ってあたりが、本書の読みどころとも言える。
スタンフォードに留学した時のTOEICの点数はほぼ満点だったらしいから、(作者自身は自分を天才じゃないと規定しているが)恐ろしく「出来るヒト」ではあるんだろうと思うよ。
その人物にして・・・ってところがグローバルビジネスの難しさであり、恐ろしさかなぁ。
もっとも作者自身は日本や日本企業の状況に対して、批判的ではあるが、悲観的ではない。
そこには確かな「力」があると言うのが作者の見立てだろう。
ただその「力」を活かすには・・・と言うのが作者の立ち位置じゃない?
作者が考えている「日本の競争力を高める鍵」が、「MOT(Management Of Technology)」=「技術経営」と言うスキルだ。
なかなか面白いと思うし、確かになぁってのはあるよ。
作者自身の経歴が正にその「実例」なんだろうけど、考えてみたらこれを最も実践してるのが「アップル」なんじゃないか、と。
「インサイド・アップル」を読んだばっかりだから、そんな風に感じちゃうのかもしんないけどねぇw。
半導体ビジネスの実態から、グローバルビジネスのドラスティックでリスキーな実態も見えてくる。
そう言う面でも興味深い作品だったと思う。
読んで損はないんじゃない?