鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「新自由主義の復権」

・新自由主義の復権 日本経済はなぜ停滞しているのか
著者:八代尚宏
出版: 中公新書



僕自身は「新自由主義」に対しては一定の留保を求めると言うスタンス。
作者が言うように、「新自由主義」は「市場原理主義」と同じでないことは理解しているが、その弊害を呼び込みやすい性質を持っているのも確かであり、そこには警戒が必要・・・って感じかな?
世界経済における格差拡大に対しても懸念を持っている。


ただ東日本大震災以降のこの一年の政府や官僚の動向を見ていると、
「政府や官僚のビジョンや裁量に期待し過ぎちゃいかんのではないか?」
と感じるようになっている。
他方、民間のボランティアが機動的に動くことで、現地の状況に会った柔軟な成果をあげているところを考えると、
「あるいは民間(市場)を活用する仕組みのほうが上手く機能するんじゃないだろうか?」
という気もしている。
本書を読む気になったのは、そう言う環境認識に沿ってのことだ。


作者は安倍・福田内閣で経済諮問会議のメンバーだった人物。
従って現在の民主党政権への評価や、(諮問会議を活用した)小泉内閣の評価なんかについてはそれなりのバイアスがかかってる可能性はあるがw、まあそれはそれとして読めば、「新自由主義」に関して基本的なことは理解できる内容になっている。
小泉内閣の政策の意図や現在の日本の課題に対する具体的な提言も豊富で、(賛同するかどうかは別として)自分の考えを整理する上で役に立つ内容になってると思うよ。


一方で「政府の役割」って言う点では、「うーん・・・」。
結局、「新自由主義」においても「政府の役割」ってすげぇ重要なんだよね。
セイフティネットと、根幹となるルールを司ると言う点において、重要性と言う意味では決して「大きな政府」に劣るものではない。
むしろハンドリングを間違えると「市場の暴力」が噴出してしまう可能性があるだけに、より重要と言ってもいいのかもしれない。
しかしそうなると、「政府」や「官僚」に対する信頼感に懸念がある状況だと、なかなか・・・。


ただまあ、今の政府や自民党を見てると、日本における「賢人政治」の将来性には賭けれないかなぁ。
「大きな政府」の誤りは国そのものの衰退につながる危険性が高く、方針を変更させるにも非常に大きな力が必要となる。
となると、リスクはありながらも修正する昨日も機会もある「新自由主義」的スタンスのほうが「マシ」か・・・?
読み終えた時の感想はこんなところかな。
「どっちか」って話ではないと思うけどね。


半分くらいは既得権益層に足を突っ込んでるかもしれないモンにとってはナカナカ厳しい未来像ですがw。