鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「電力危機」

・電力危機 乗りきるための提案、この先50年を支えるための提

著者:山田興一、田中加奈子
出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン


週末、妻と「節電」について話し合う機会があった。
直接のきっかけは「小学校の節電」。
息子が通う小学校で熱中症の生徒が出たらしく、教室のエアコンをつけなかったことに、PTA内部で不満が出て来ているようなのだ。
(実際には話を聞いてみると、本当に熱中症だったのかどうかは微妙な話のようではあったんだけどね)



色々話をしていて良くわかったこと。



「短期的な節電の話と、中長期的なエネルギー施策の話をゴッチャにしちゃいかん」



今、福島原発の不安定な状況を目前にして原発に対する信頼性は大きく損なわれてるけど、「節電」を回避する最も効果的な施策は「原発再稼動」だったりする。
この矛盾が苛立ちや無力感に繋がって、そこから東電や政府に対する不満が噴出する。
だからって「節電」を無視した末に万が一「大停電」になったりしたら、結局苦労するのは自分・・・という袋小路が更に苛立ちを増幅・・・。

(「電力は十分にある」という意見もあるけど、その前提には「節電効果」が織り込まれてたりするから、この矛盾が解消されるわけじゃない)



「節電」は「節電」として短期的対処をきっちり行い、並行して将来の日本社会のあり方を見据えつつ、「エネルギー政策」を議論する。

結局のところ、こういう風に整理して考えることが、精神衛生上も必要なんだというのが、我が家の結論w。



<「夏の電力不足対策をはじめとする短期のビジョン」と、「日本が復興するために必要な中・長期のビジョン」をまとめました。>(P.7)



そんな我が家に、本書はバッチシの一冊でありました。



「節電対策」を前半で論じ、「エネルギー政策の方向性」を後半に論じると言うのが本書の構成。

前半の節電対策では、「節電対策」の必要性にはじまり、「ピークシフト」「ピークカット」等の考え方を具体的に説明、更に「家庭」「オフィス」「製造業」「サービス業」等の区分別にどのような「節電対策」がありえるかを個別に説明してくれる。

家電の使い方なんか、「あらためて」って感じではあるけど参考になったし、「オフィス」「産業」でのピークシフトの意味合いなんかも分りやすく説明されている。
やってることの「意味」を知るっていうのは、それはそれで重要なことだと思うよ。

(「唯々諾々と節電に取り組むことは、東電・政府の『陰謀』『隠蔽』に加担することだ」
みたいな意見もあるかもしれないけど、それはそれ、これはこれ)



後半の「エネルギー施策の方向性」は、基本的には「原発依存度を下げながら再生エネルギーの比率を上げていくべき(しかない)」ってもの。
その依存度の下げ方について選択肢を複数示してるあたりが本書の現実的スタンス。

「脱原発」ってのは色んな人が言ってるけど、一番の問題は「時間軸」なんだよね。
その点をしっかり示しているあたり、実に地に足が着いた印象がある。

(一方でそれは「すぐには原発を止めれない」というスタンスでもある。定検明けの原発を如何に立ち上げるべきか、という政治的課題は本書ではスルーされている。ま、それは別の話だからね)



まずは本書を妻にも読んでもらって、我が家の「ピークカット」「ピークシフト」対策について打合せしましょうか。

「エアコン」の間欠運転は有難いなー。