鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「正太郎の粋 瞳の洒脱」

・正太郎の粋 瞳の洒脱
著者:山口正介
出版:講談社文庫(Kindle版)



池波正太郎
山口瞳



10代の終わりから20代にかけて読み、影響も受けた作家たちの中でも上位に属する作家だと思いますね、この二人は。
特に、
「男はどうあるべきか」
「大人とは何か」
って観点からは、この二人のエッセイは随分と影響を受けたように思います。
それが身についてないことに、40代の終わりの今、暗然たる気分にもなりますがw。
(言い訳すると、「粋」と「洒脱」が、「気障」に思えちゃう時代が・・・いや、これは言い訳ですね、やっぱり)



本作は山口瞳の息子が、交流もあった池波正太郎と自分の父親を並べ、改めて二人のスタンスをエッセイした作品です。
懐かしい感じがしましたねぇ。
「懐かしい」と思うところに、如何に自分がそこから遠ざかってたかってのもあるんですが。
ちょっと反省させられました。



もっとも今の若い人や、自分の子供達に池波正太郎や山口瞳のエッセイを薦めるか・・・っていうと、ちょっと微妙なところはあります。
やっぱりそこには「時代」ってものの影響が色濃くありますからね。
例えば池波氏と母親/妻との関係って言うのは、やっぱり今じゃ問題視されちゃう可能性は否定できないと思います。
その「精神」は評価できても、振る舞いとしては・・・
「昔は良い時代だった」
とは僕も言えないです。
まあ当時読んでたときでさえ、
「ちょっと時代錯誤な気も」
と思ってましたからねw。
(その点、小説の方は今も「おすすめ」。そういう意味じゃ、吉行淳之介が「男性自身」に批判的だったってのも理解できます。池波氏の時代小説は今も大人気ですが、山口瞳の「血族」なんか、もっと入手しやすくなってもいいと思います。
電子書籍がこういうところにリーチするといいんですが)



個人的に驚きだったのは、作者の山口正介氏が自分より15歳も年上だったこと。
考えれば当然なんですけど、「男性自身」や「江分利満氏」シリーズを後追いで読んだために、何となく自分と同年代か、下手したら少し年下くらいに感じてたんですよね(笑)。
その感覚的な誤解を解く意義も本書には(僕にとっては)あったかも。
それだけ正太郎/瞳の時代が遠くなった気分もありますがね。