鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「問答有用」「中国の大盗賊・完全版」

・問答有用 中国改革は19人に聞く
著者:吉岡桂子
出版:岩波書店



・中国の大盗賊・完全版
著者:高島俊男
出版:講談社現代新書



「問答有用」
これも出口セレクトですねw。
ま、それ以外にも誉めてる書評は読んでたんで、購入した訳ですが。
基本的には、
「現在、日中の関係は感情的なレベルに陥っているけど、決してそんな人ばかりではない。中国政府の中核の役職を占める人にも改革派はいて、彼らは日中関係を冷静に捉えている」
というのがベース。
19人の「改革派」は政府機関の現役のトップであったり、NGOの代表だったり、文化人だったり・・・バラエティに富みながら、冷静に事態を分析しており、感情に流されるような事態を憂慮しているってうのは共通してます。
政府機関の人なんかは、
「そんなことにはなる訳がない」
ってスタンスですらあります。
確かにこういう「声」はあまり入ってきませんから、
<もっと違う声が中国にもある>(帯)
ってのが確認できます。



でもコレとたまたま並行して読んでたのが「中国の大盗賊・完全版」だったんで、ちょっと違う感想も持ちましたね、僕は。
「中国の大盗賊」は、
「中国の多くの王朝は『盗賊』の流れである」
と主張し、その流れの帰結として、
<共産党の中国とは盗賊王朝である!>(帯)
と断じます。
著者は、ここでいう「盗賊」って言うのは、日本語で言うと感じる「盗人」とは違うんだよ、と最初に語りながら、全体のトーンとしてはあまり好ましからざる「盗賊」という印象を(まあ意図的に)維持したまま、結論である共産党・中国批判に繋げて行きます。
(どうも最初に出た判ではそういうトーンじゃなかったようなんですが、この「完全版」はそういう構成です。ま、最初からそういう意図が作者にはあったようですがね)
「毛沢東」を「大盗賊」と断じ、共産党政権の欺瞞を主張してる訳ですが、過去の中国の王朝の成立と比較ことでナカナカ説得力のある内容となっています。
「ちょっと感情的すぎるかなぁ」
って感じもしなくはないですがw。



この「中国」観っていうのは、
「13億もいる人民をまとめるのはナカナカ難しい」
「経済成長という『飴』が途絶えた時、共産党政権は崩壊する」
っていう、まあ割と今もある「見方」に通じます。
その一方で「問答有用」なんかを読むと、そういった欠陥のある体制の中に、しっかりとした見識のある人材が育っていて、彼らが体制を支えつつある実情が窺えたりもします。
「案外、中国は違う次元の存在に変わって行く可能性があるのかも」
・・・そんな気もしたりする訳です。
それはそれで恐ろしいことかも・・・ってのは僕も嫌中に毒されてるかなw。



何にせよ、読み応えがあるし、「今」にも通じる2作品でしたよ。