鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「日本人へ 危機からの脱出篇」

・日本人へ 危機からの脱出篇
著者:塩野七生
出版:文春新書



「文藝春秋」に連載をまとめた本の3作目。
2010年5月号から2013年10月号分が一冊になっている。
日本で言えば鳩山首相退陣後、東日本大震災をはさんで安倍政権設立・・・くらいの間。
日本にとっては近年にないくらいの激動の数年であり、世界にとってもヨーロッパ危機が混迷した時期に合致している。
「危機からの脱出」
希望的に読めば、自公が過半数を制する国会勢力図により安定政権が誕生したことをもっての評価・・・なんだろうけど、全体的なトーンは「希望的観測」。
本作の中ではイタリアの「モンティ政権」の成立時の高評価と、退陣時の失望が描かれているんだけど、安倍政権がそんな風にならなければいいけど・・・みたいな勘ぐりもしたくなる(勿論、「連載」でそのときそのときのことを書いているので、そんな意図は作者にはないだろうけどねw)。



作者が一貫して言っているのは、
安定政権とリーダーシップ
「失われた20年」でもこのことは散々語られてきたけど、「東日本大震災」とその後福島原発対策を中心としたの混迷(残念ながら今もそれは継続している)において、その必要性は極めて明確になった。
安倍政権の成立はそういう観点からは「必然」であったし、それを生み出した民意が歴史の流れを好転させることを、僕も願っている。(個人的な肌合いは安倍政権には違和感を感じちゃうんだけどね。もっぱら「歴史認識」「近隣外交」のあたりで)



塩野氏の主張は一貫しているし、そういう視点から時事的な事象を見たエッセイというのは、それはそれで面白い。だから間違いなく一読の価値はある作品だと思うんだけど、読み終えて思ったのは、
「本業の方の作品をちゃんと読まなきゃな」
って想い。
「ローマ人の物語」も最後の数巻は積ん読状態だし、最近作(十字軍をテーマにした奴)も、気になりながらもスルーしている。
でもこういう時にこそ歴史書ってのは意味を持つかも・・・と思い直しているところです。



まずは「十字軍」からかなぁ・・・。