・集団浅慮 「優秀だった男たち」はなぜ道を誤るのか?
著者:古賀史健
出版:ダイヤモンド社(Kindle版)

読みながら我が身を振り返りつつ、
結構イタイ
一冊でした。
自分にも思い当たるところが重々ある…という意味で。
<昭和的な価値観から抜け出せないフジテレビの中高年層。ハラスメントに寛容な企業風土。正当な訴えが「ノリの悪さ」として封殺されるホモソーシャル的な空気。容姿や年齢が重視され、セクハラの「受け流しスキル」が求められる女性社員。軽んじられる人権と、麻痺していく倫理観。そして誰ひとりとして現実を直視せず、責任を取ろうとしない経営陣の対応。>
<ただ、今回の調査報告書を読んで思うのだ。当時のフジテレビを知る中高年層はもちろんとして、いまの若い世代のなかにもどこか、「内なるフジテレビ性」が残存していないだろうか。たとえば、お笑い芸人たちに見られるホモソーシャル的な仲間意識。「いじめ」と「いじり」の曖昧な境界線。露骨な下ネタ、セクハラ、パワハラ発言を軽い冗談として笑い飛ばす高圧的空気。暴力的で、恫喝的な言葉遣い。なんらかの「業界人」を自任し、業界を知らない「素人」を蔑む心性。──これらはすべて、現在のインフルエンサーや SNS空間にも見られる態度であり、多くの人々がその「フジテレビ的なノリ」に喝采を送り、加担し、溜飲を下げている。僕自身のなかにも間違いなく、「おおらかだったあの時代」への郷愁が残っている。コンプライアンスに厳しく、ポリティカル・コレクトネス最優先な昨今の言論空間を息苦しく思い、あのころの自由を求める自分が残っている。時代は明らかに変わったはずなのに、肝心の「人」が、あるいは「心」が、まだ追いついていない。>
読んでて痛くもあり、ヒヤリともする指摘です。
(ChatGPT)
作品の背景・概要
フジテレビで起きた重大な性暴力事件について、会社が設置した第三者委員会の「調査報告書」(約400ページ)を読み解き、その内容をビジネス書として一般読者向けに翻訳した一冊。
「中居氏が何をしたか」よりも、「なぜフジテレビという組織は、被害申告があったあとも、こんなにもまずい対応を重ねてしまったのか」という“組織の失敗”に焦点を当てている。
主張のポイント
• フジテレビの不祥事は「特殊な事件」ではなく、日本企業に共通する組織病理の縮図である。
• キーワードは「集団浅慮」──優秀な個人が集団になると、空気に流されてバカな意思決定をしてしまう現象で、フジテレビの経営陣・管理職にもそれが典型的に現れていた。
• 原因の中核にあるのは、「同質性の高い壮年男性」で固められたオールドボーイズクラブ的な組織構造。多様性の欠如が、ハラスメントへの鈍感さと判断ミスを増幅させていた。
• 必要なのは「人権意識」よりも「人権知識」──「あなたには尊重される権利がある」という前提から組織ルールを組み直し、誰もが空気に飲み込まれずに「それはおかしい」と言える状態をつくることだ、と訴える。
夏ごろまで盛り上がっていたのは、この第三者委員会の報告書に対して中居さんの弁護士から「性暴力」という言葉の使い方に対する反発があり、それに何人かの著名人が賛同する形で中居氏に対する人権侵害についてコメントするような動きがありました。
その後ちょっといろいろやり取りがあって、結局この動きは沈静化しているように見えますが、そもそも第三者委員会の報告書は、「性暴力」を認定をするようなものではないんですよね。
それが「性暴力」であったということ自体は、そもそもフジテレビの経営者自身が認めているわけです。
それを前提として、どういうふうに組織として動くべきであったか、その失敗について論じているのが報告書の内容なわけですから。
(本書の中では「性暴力」という言葉がなぜ使われるようになったかの解説もちゃんとされています。
でもそこの是非を問うことがメインでないということは本書についても同様だと思います。
それ自体は別のところで語られるべきであるし、判断されるべき事案であるでしょう)
人権意識に対する日本の組織の希薄さや意識の薄さっていうのは昔から言われているし、それ自体は何度も何度も繰り返し指摘されていることです。
それがこういう形でしっかりと,指摘され、論理的に論じられたっていうことが、この報告書の意義だと思います。
また、その点に関して「人権意識を高める」というような方向性の話ではなく、人権に対する知識=人権知識を持つということが重要なのだということをでは主張しています。
フジテレビの経営陣も被害者に対する思いやりや共感は実は持ってたんですよね。
ただそれを踏まえてどう対処するかという点に関する知識が不足していた。
ここが問題なわけです。
その知識の上にどういう人権意識というものを醸成していくかっていうのが重要だというのが本書のポイントだと思います。
僕自身も自分の組織の中での振る舞いや組織のあり方などを考えると、本当に忸怩たる思いもあるし、反省する点も多いし、頭を抱えるところもあります。
でもこうやって、しっかりと指摘する流れもあるということ、そしてそのことが反発を受けながらも、最終的には社会の中で受け入れられているということ。
これはプラスなんじゃないでしょうかね。
そして意識というような漠然としたものではなく、知識という形でしっかりとそれを裏付けるべきだという点も前向きな指摘だと思います。
ポリコレに関してはいろいろ揺り戻しもありますけれども、そういう話じゃないんだなっていうのが本書を読むとよくわかります。
団塊の世代がそろそろ経営陣からも一歩足を抜けつつあるタイミングではあるとは思います。
それでもまあ組織の中にこうした感覚が残ってるのはまだまだ確かでしょう。
そういう意味においてこのタイミングで第三者委員会の報告書や本書を読んでおくのは、組織員として重要なことなんじゃないかと改めて思いましたね。
いい本だと思いますよ。

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