鈴麻呂日記

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ネガティブな著者がChatGPTを使ってみた評価が興味深い:読書録「言語学者、生成AIを危ぶむ」

・言語学者、生成AIを危ぶむ 子どもにとって毒か薬か
著者:川原繁人
出版:朝日新書(Kindle版)

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ここのところ、趣味と仕事を兼ねて生成AIを結構使ってるんですけど、そうするとどうしても生成AIに対してポジティブなニュースや記事が目に入ることになってしまいます。
ちょっとそこら辺に対する懸念もあったので、生成AIに対するネガティブな本を読んでみようと思って本書を買ってみました。


(ChatGPT)
(概要)
慶應大の言語学者・川原繁人による新書。
生成AIと人間の言語システムの「原理の違い」を出発点に、言語獲得期の子どもへ会話型AIを渡すことの利点と危うさを、言語学・心理学・認知科学の知見を踏まえて整理する。
要点は、①生成AIは理解や意図を持つ“人”ではない、②もっともらしい誤りやモデル固有の話し方の偏りがある、③会話の背後には大きな電力など物理的コストがある、④身体・感覚・他者との相互作用という「AIに任せられない学び」がある――の四つ。
家庭で使うなら“共に学ぶ設計と同伴”が肝心だとして、大人向け/保護者向けの注意ポイントを付録ポスターで具体化している。

 

本書は言語学者の作者が、同じく言語学者の奥さんと子育てをする中で、生成AIを使った「おしゃべりAI」を幼児の子育てに使うことの是非について論じている本になります。
専門が専門ですからね。
基本的にはネガティブ。
ご夫婦ともに生成AIだけではなくて、スマホの活用に関しても、子育てについてはかなりネガティブなスタンスで書かれています。
そのことは作者自身がポジショントークであることをちゃんと明言していて、そこら辺はバランスが取れてるなと思いますよ。


まあ正直言って、でも幼児、小学生に入る前くらいの子供に,生成AIをベースにした「おしゃべりAI」なんかを与えるっていうのは、僕もどうかなと思いますね。
言語を身につける上においては、身体性が大切だということが、批判のポイントの一つになっているんですけど、それは本当にその通りだと思います。
だから、そういう意味において、作者の主張っていうのは特におかしいものはないし、僕も納得できるところがあります。
そもそも生成AIのサービスだって利用に関しては13歳以上とかそういう設定になってるはずですし。
まあそれが守られてないっていう問題があるっていうのは確かにそうなんですけど。


本書に関して言うと面白いのはむしろ、
「生成AIを批判的に論じる以上、自分も使ってみなければならない」
というスタンスで、ChatGPTを作者が使ってみる章です。
使ってみて作者はChatGPTの能力の高さや活用の可能性に驚き、結構突っ込んで使っているんですよ。
もちろんメモリー機能の不十分さやモデルの設定の不明確さなどがあって、そこらへんが批判の対象になるんですが、「あとがき」なんかを読んでもかなり肯定的に機能に関しては評価していることが伺えます。
幼児や未成年者が無自覚に使うのは課題がある。
しかし前提条件さえ把握していれば、極めて有効的な機能がここにはある。


無自覚な利用が人格形成や精神状況に影響を及ぼす恐れがあるってことは、GPT4o騒ぎのあたりでサム・アルトマンがコメントしてたところにも重なる部分でもあるんですよね。
そういう点を踏まえてOpenAIをはじめ、各生成AI企業はいろいろなチューニングをしているっていうのが正直なところだろうと思います。
GPT4o騒ぎで明らかになったのは、OpenAI社は精神科医とかの専門家とも連携をしながらそこらへんの調整をしているということ。
単純に4oに戻すわけじゃなくて、そこらへんを整理しながらレガシーモデルの復活を行ったあたりなんかにもその慎重さが伺えます。


大人の活用に関しては、作者自身が懸念と考えているところは生成AIを作っている企業の方も認識をしていて、その対処や機能アップに努めているっていうのが実情ということになるんでしょう。
そういう点でいくと、今後はどんどん使っても大丈夫って感じになるのかもしれません。
大人の場合はですけど。
さすがに子供は難しいと思います。
子供というか、まぁ幼児ですよね。
幼児に生成AIを与えるのはまだまだ先でしょう。
ロボットが出てきたとしても、まだなかなか難しい。
もちろん本書でも指摘されているように、特別な家庭環境の問題とかがある場合、それを利用するっていう可能性っていうのはあるでしょうけど、それ自体はやはり専門家のサポートがあっての話だと思います。


ただ一方で作者自身指摘しているように、生成AIが社会に実装されていくことを止めることはもう難しいでしょうし、実際便利にもなってきている。
その中でどういう風にハンドリングをしていくかっていうのはこれからの大きな課題。
しかも時間がない中で決めていかなければならない大きな課題であろうというのは確かだと思います。
歯止めをかける…のは本当に難しくなってきてます。

 

ちなみに最後の章でスマホに対する警告が書かれてましたけれども、これ自体は本書について言うならば、ちょっと余計だったような気がします。
問題意識はよくわかりますし、それ自体全く反対はしないんですけど、作品のスタンスがブレたような。
著書自身は専門家ではないわけですからね。
そこはちょっと残念だったなと思いました。
気持ちはわかるんですけど。

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