鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

権威主義的国家礼賛には乗らないけれど:読書録「西洋の敗北と日本の選択」

・西洋の敗北と日本の選択
著者:エマニュエル・トッド
出版:文春新書(Kindle版)

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もともとは「西洋の敗北」を読もうかなと思ってたんですよ。
そのうちにオーディブルにあるのを見つけてダウンロードしたんですけど、聴き出す前にこの新書が出ているのを見つけて、こちらに切り替えた次第です。
まあ、ちょっとなんか硬そうでしたからw。


(Amazon)
本の概要
英語版以外の25カ国で翻訳され、日本でも累計9万部のベストセラー『西洋の敗北』の著者、エマニュエル・トッドの最新作。
〈私の多くの予言のなかでも「西洋の敗北」は、最もすぐに実現したものです。しかし「西洋の敗北」が具体的にどんな形をとるかは予言していません〉とトッド氏自身が述べているように、問題は、「西洋の敗北」がどんな形で現れるかだ。
すでに起きているウクライナ戦争、イスラエル・イラン紛争、トランプ関税、米欧の分裂と対立は、いずれも「西洋の敗北」が現実化したものである。
さらに今後、起きるのは、NATOの決裂か? ドル基軸体制の終焉か? 米国覇権の崩壊か? そして日米同盟はどうなるのか?
「西洋の敗北」「西洋の分裂」を受けて、日本はどうすればよいのか?
トッド氏はこう指摘する。
〈日本がかなり困難な状況にあることは間違いありません。米国が当てにならないなかで、中国と対峙しなければならないからです。
現状で私がお勧めしたいのは、欧州と米国のヒステリーに極力関わらず何もせずに静観すること、しかし密かに核武装を進めることです。
米国が自国の核を使って日本を守ることは絶対にあり得ない。核は「持たないか」「自前で持つか」以外に選択肢はないのです〉

 

僕自身とはエマニエル・トッドについては、ちょっと距離感があるとは思っています。
「西洋の敗北」って、西洋がロシアに対して軍事的な面でも、思想的な面でも敗北したっていう内容になってるんですけど、軍事的な面っていうのはどうなんですかね。
その根拠となっているのは、ウクライナ戦争が起きた当初の軍事生産力の差によって決定づけています。
要は、欧米の軍事産業施設が十分な生産ができない状況になっているのに対して、ロシアの方はしっかりとそれが稼働していたっていうこの差ですね。
まあこれ自体、事実であったようですけれども、ただ戦争ってのは長くもなりますからね。
今現在、欧米の軍事生産力が上がってきて、この差というのはかなり迫ってきているというふうに言われています。
まあ正確なところ、それがどうなのかというのはわからないですけれども、第二次世界大戦の真珠湾攻撃から、その終了の時までの流れなんかを考えると、時間が経つことでキャッチアップされてしまうというのはあり得ることなんじゃないかと思います。
そういう意味において、軍事的に敗北をしたと断言するのは、やや早計なんじゃないかっていうのが僕のスタンスです。


思想的にはある意味、言ってることはわからなくもないですね。
それはEUの状況もそうだし、アメリカの状況を見てもそうです。
ただ一方でロシアとか、あるいは中国とかが安定しているっていうのは、それは権威主義的な専制国家であるから安定しているっていうことなのであって、それをもって良しとするかどうかっていうのは、これはまた別の話ですよね。
思想的に欧米がガタガタしてるのは間違いないんですけれども、だからといってそれをロシアや中国に敗北しているという形で捉えていいのかどうか。
それを是認してしまったら、結局、権威主義的中央集権国家の方がいいっていう結論になっちゃいますからね。
そうじゃない方向性があるのか、そのためにはどうすればいいのか。
僕はそっちに論点を置くべきと考えています。


日本に対するアドバイスとしては、一つはガタガタしている欧米にキャッチアップせずに、のらくらやっていくべきだっていう、
これはまあそうかなっていう気がしなくもないですw。
いや、今の日本の政治的状況っていうのは、そこらへんが揺らいでいるところがあるなというふうにも思いますけど、それでもやっぱりのらくらやっていくっていうのは一理あるかなと。
もう一つの核保有に関してはどうですかね。
ドッドはアメリカの中にも日本の核保有を後押しする層があるというようなこともコメントされてますけれども、それはそうかもしれないですけれど、果たしてそれが現実化したときに、国際的に認められるのかどうかっていうのが、どうも何とも言えないところがあります。
個人的にはあまり賛成できないっていうのが僕のスタンスですかね。


対策としての中で、トッドがこういうことに踏み込むよりも、人口減少に対して真剣に取り組むべきだと言っている点に関しては大賛成です。
いや、実際そのことの方が問題だと思うし、人口減少対策に取り組むことによって、思想的にも体制的にも、ある種の現実感やリアル感が出てくるっていうのは確かにあるんじゃないですかね。
今、日本の一部の層にはそういう方向で動いていて、現実的、具体的な対策を重視する方向に力点を置きつつあるというところもあるというふうに感じています。
ここら辺も日本がのらくらやっているからかもしれませんけどね。
AIに対する肯定的な見方なんかはそこ延長線上にあるんじゃないかなぁ。


総じてエマニュエル・トッドの著作というのは、僕にとっては、
「賛成はできないんだけれども、そういう見方もあるんだな」
という、ある種の批判的参考資料として読むというのに適していると位置づけています。
今回もそんな感じで読ませてもらいました。
まぁ、トッドにとっては「家族」とか「国家」とかっていうのが極めて重要な意味を持ってるんですけど、僕自身は国家とか家族とかって言うことに対してある意味斜にかまえたスタンスで生きてきた人間ですからねw。
距離感、感じちゃうのも当然かな。


とは言え、興味深い本なのは間違いないと思いますよ。
まあ、中東もガタガタしてきてるし、なかなか国際情勢が厳しい局面に入っていて、その中でどういう舵取りをすればいいのかっていうこと自体、難しくなっているのも間違いないでしょうけどね。


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