・おどろきの「クルド人問題」
著者:石神賢介
出版:新潮新書(Kindle版)

クルド人問題については、そういう問題があるっていうのは認識してましたけど、あまり深く突っ込んでは知りませんでした。
まあ地域的に離れていますからね。
当事者じゃないのにドウのコウの言うのは違うかなと思いまして。
ただまぁ、「日本人ファースト」とか言われるようになって、そのたびに「クルド人問題」と言われるようなところがあったので、ある程度は知っておく必要もあるのかなと考え直していたところでした。
そのタイミングで大阪の紀伊国屋本町店がこの本の案内をしたところ、埼玉の議員さんのクレームで炎上騒ぎになったっていうのがあって、まあちょうどいいタイミングかな、読んでみることにしました。
(Amazon)
本の概要
不用意に撮影したからか。気づけば僕は過積載のトラックに追いかけられていた……。きっかけは「埼玉県川口市に実際に住んで、クルド人問題を取材してみませんか」という編集者からの提案。ケバブ店、クルド人御用達の朝食食堂、シーシャバー、解体業者、教育現場と市内を縦横に駆け回り、子ども、住民、市議会議員から市長にまで話を聞き、見えてきたのは「多文化共生」という理想と現実のおどろくべきギャップだった。
【目次】
はじめに
第1章 事件とトラブルが起きていた
国を持たない最大の民族/テロ組織との関係/クルド人関連事件簿/医療センターで100人規模の大暴動/赤羽の公衆トイレで性的暴行/伊刈トラックひき逃げ死亡事件/商業施設花火投げ事件/10代女子連続性的暴行事件/前川無免許ひき逃げ事件/子どもが遊ぶ公園で性行為
第2章 西川口駅前は昭和の空気漂う平和な街だった
『キューポラのある街』の今/ギャンブルと性風俗の街から多国籍の街へ/川口に住むクルド人と対面/「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」/彼らは難民ではない?/駐日トルコ大使たちの対応/仮放免で日本に滞在し続けるループ/クルド人が解体業に就く理由/「ニホンジン、シネ!」/PKK創始者の声明
第3章 解体業のトラックに追い回されて怖かった
真っ暗闇の町/シーシャバーへ/自転車で再度赤芝新田へ/地域住民たちの意外な反応/小学生に聞き込みしてみたら/朝食のパンは500円/女性に怪しまれる/クルドカーに追われる
第4章 市議会議員たちは脅されながら闘っていた
議会にて/仮放免者の名簿はあるのか/いい外国人、悪い外国人/川口市と国との意識のギャップ/奥富市議の覚悟と気骨/起訴するべき事案は起訴、罰するべき者は罰する/クルド人関連でビジネス展開する日本人/クルド人対策視察ツアー
第5章 解体業者の事情を根掘り葉掘り聞いてみた
なぜ解体業に参入したのか/クルド人解体業事件簿/深刻な人手不足/100社と面談し50社以上に問題が発生/日本クルド文化協会に取材を申し込むと
第6章 「東京湾に沈めてやる」と市議は言われた
市議、交通事故被害に遭う/被仮放免者リストを自治体も共有する必要性/不法就労者にも課税せよ/警察は打つ手を失っている?/ヤード条例改正/地主との持ちつもたれつ/「東京湾に沈めてやる」/リーダー不在の弊害/ケバブ店に入り浸る
第7章 クルド人の子どもたちはとても人懐こかった
芝園へ/教育を受ける権利/“サバイバル日本語”の習得/言葉の壁/雨の日はお休み/かしこく やさしく たくましく/共生社会講座/大人の事情と子どもの自我
第8章 川口市長は本音と苦悩を口にした
川口市から国への3つの要望/市役所へ/市の公用車を青パト車両として配備/赤芝新田からの陳情書/市街化調整区域の抱える事情/線引きは法律で
おわりに
議員さんの主張とか紀伊國屋の対応については、僕はどうこう言う立場にはないと思っています。
どちらにも言い分はあるでしょうからね。
それぞれにそれぞれの一理はあるでしょう。
議員さんの主張が産経新聞に載ってましたけれども、ある程度、そういう意味では自重されたところもあるようですので、この件について僕は突っ込む必要はないと思っています。
(同意見、ってわけじゃないですよ。見解の相違はあります)
本の内容についてはどうですかね。
ヘイト本というのはちょっと言い過ぎじゃないかなと。
作者はそれなりにやはり中立ということは意識をしていて、内容的にも差別的なことを言っているような内容ではないですよ。
ただAmazonの紹介文(上記)はどうですかね。
これ多分編集者かなんかが書いたんでしょうけれども、これはやや傾きがあるかなっていう風に思います。
この内容ほどそんなに激烈なことが書かれてるわけじゃないですね。
正直言うと、本書を読むと、クルド人問題に関しては論点もかなり整理をされていて、それに対する対応も(遅々としてではあるでしょうが)進んでいるというふうにも見えました。
もちろん、すべてがすぐに解決するわけではないけれども、論点が明らかになっている分だけ、それに対してどこまで実行性を持ってやっていくかっていうところまで来てるっていう風には見えます。
それがどこまで実行されるかっていうところはもちろんこれからの課題であるし、かなり時間がかかるという中で、どう対応していくかっていうのは、当事者としては重要な問題だろうと思いますけどね。
当事者じゃない僕の立場から言うならば、今後、外国人労働者をもっと増やしていくとか、そういうことがあるとした場合、どういうような対策をしていくか、どういうような点に注意をしなければならないかという点において、ここで本書で整理されていることなんかは役に立つというふうに思いました。
まあそれだけ人種的な問題ではなくて、入管・就労・教育・地域運営といった制度設計の話として、クルド人問題を捉えてるっていうのが本書の基本的なスタンスだと思うんですよね。
細かいところで色々と傾斜があるっていうのは確かにあるところもあるので、そこについて批判があるのも仕方がないと思いますけど。
全体の構成上一番問題なのは、クルド人サイドの意見をしっかりと言える人がいないっていうことでしょうか。
これはまあクルド人サイドの方の体制的な問題っていうのも結構あることは間違いないんですけど、こういう形で突っ込んでいく以上はジャーナリストとしてそこの点をもっと踏み込んでいくべきだっていう批判はあってもしかるべきかもしれません。
ただ住んでみただけっていうルポよりは、一歩突っ込んだ内容になっているだけに、そこが気になるっていうところがあるんですけどね。
おそらくクルド人問題については、当事者の悩みとは別に、それがある種のイメージとなって、それ以外の地域に広がっているっていう部分の方が大きいんじゃないかと思います。
ここは今、日本の政治の中で焦点になっているテーマでもあるし、それに対していろいろな動きがあるというところもあります。
注意すべきはそっちの方かもしれないなというのが僕の感想です。
その観点からも本書の指摘事項というのは結構役に立つところもあると思うんですけれども、まあそれもいろいろ立場によってっていうのがあるのかもしれません。
簡単なぁ問題じゃないんだけどね。
#読書感想文
#おどろきのクルド人問題
#石神賢介