鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ほんの少しだけ世代が上だけど、70年代80年代の気分はすごく懐かしかったです:読書録「メディアミックスの悪魔」

・メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史
著者:井上伸一郎 聞き手・解説:宇野常寛
出版:星海社新書(Kindle版)

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Amazonのお勧めで出てきて「面白そうだなぁ」と思ってポチっとしたんですけど、まさか聞き手が宇野常寛さんとは。
2冊続けてお世話になったのは偶然
…だけど、Amazonのアルゴリズムが働いてた可能性は否定できませんね。


角川書店の社長にまでもなり、角川のアニメ・メディアミックス戦略をずっと支えてきた方の、まあ回顧録です。
59年生まれですから、僕よりは少し上。
でも70年代80年代のアニメ周辺の雰囲気っていうのは僕にも懐かしいものがあって、特に前半は一気読みでした。
(ヤマトは74年、ガンダムは79年がテレビ初放映)


本の概要(Amazonより)
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ネットに氾濫する不正確な情報じゃないぞ
これが80年代アニメ業界の(ほぼ)真実だ!
デザイナー 永野護 推薦!!
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『少年エース』『ニュータイプ』の創刊を手がけ、
編集者として『ファイブスター物語』等の数々の名作と歩み、
角川歴彦とともにKADOKAWA経営統合までを成功に導いた
KADOKAWAの「屋台骨」を支えた男の「おたく一代記」!

マンガ・アニメ・映画・文芸……あらゆるジャンルを股に掛けて、新たなメディアミックスの技法を切り拓いてきた稀代の編集者・井上伸一郎。「おたく第一世代」として「鉄腕アトム」や「ウルトラマン」「仮面ライダー」に心を躍らせた幼少期から、伝説のアニメ雑誌「アニメック」編集部在籍時代、角川書店における「ニュータイプ」「少年エース」の創刊、そしてKADOKAWA代表取締役副社長時代までを余すところなく綴った本書は、「好きなものを否定されたくない」という「おたく」の信念に導かれたひとりの人間のライフヒストリーにして、比類なき「おたく文化史」である! 宇野常寛による解説を各章末に所収。

カバーイラスト:CLAMP
聞き手・解説:宇野常寛

*本書目次より抜粋
プロローグ 「東京国際アニメフェア」ボイコット
解 説 おたく/オタクの成熟と「社会」との距離感について

1959ー1977
少年の夢、おたく第一世代が見てきたもの
解 説 「テレビまんが」の時代

1978ー1984
アニメ雑誌「アニメック」の時代
解 説 「アニメック」の頃

1985ー2006
ニュータイプ編集部とアニメ・コミック事業部の時代
解 説 「おたく」から「オタク」へ

2007ー2021
角川書店社長、そしてKADOKAWAへ
解 説 「オタク」はいかに「歳を重ねて」いくのか?

あとがき


雑誌「ニュータイプ」の立ち上げからいろいろ工夫を重ねるあたりまではかなり面白かったですね。
僕より少し上の世代の人たちがファン気質を持ったまま、どうにかその流れを社会に認められるようにしていこうとして苦闘するあたり、僕は楽しむ側でそれを享受した方ですけれども、その熱意や熱狂をなんとなく共有できるような気がします。


ただ90年代位からですかね。
僕もまぁ社会人になっていて、あまりアニメを見なくなってたっていうのが大きいんでしょうけれども、なんとなく距離感を感じるようになります。
井上さんも単なるファン気質で取り組んでいると言うよりは、アニメや漫画をビジネスとして幅広くしていこうと、メディアミックスの取り組みに踏み込んでいって、その戦略を駆使する話が後半のメインになります。
それはそれで興味深いし面白いんですけど、なんかちょっと根拠のない熱気みたいなものとは違ってくるんですよね。
だからこそ、アニメや漫画がクールジャパンと言われるような日本の重要な文化として認められるようになってきたっていうのもあるんでしょうけど。


本書の冒頭は、井上さんの若い頃じゃなくて、井上さんが経営者になってから、当時の石原慎太郎都知事と都条例をめぐってやり合い、「東京国際アニメフェア」ボイコットで決定的に対立するところからスタートします。
アニメや漫画の価値を認めようとしない石原慎太郎に対する井上さんの怒りってのは、ある意味世代間の対立でもあると思うんですけど、僕もすごく同感できるところがあります。
というか、ここでの石原慎太郎にはむちゃくちゃ腹立ちます。
まぁ元々あんまり好きじゃないってのもあるんだけどw。

 

解説で触れられている「パトレイバー2」をめぐっての押井守と、その1つ下の世代になる井上さん達との感覚的な違和感っていうのもなかなか面白かったです。
もちろん「パトレイバー2」は大傑作なんだけど、あの映画の主人公は後藤や南雲であってOVAなんかで描かれていたような青春群像は後ろに後退しちゃってるんだよね。
テロリストに対してある種のロマンティシズムを重ねてしまうようなことに、やっぱりちょっと違う感覚を持ってしまうというのはわかります。
現代になれば、それはなおさら強く感じるようにもなってて…
いや「パトレイバー2」は大傑作なんだけどさ。


そういう世代論的なことから見ると、井上さんがビジネス戦略として繰り広げたアニメや漫画を享受していた世代がどういう感覚を持ってきたのかっていうのはそれはそれで興味深いところはありますね。
それはまた僕の子供たちの世代への興味でもあります。
もちろん、それは本書で語れる話ではなくて、別のところで語られることなんでしょうけど。
まあでも少なくともアニメや漫画に対して彼らが差別的な意識を持っているとは全く思えないです。
僕はアニメや漫画には全然差別的な意識は無いですけど、ラノベにはちょっとそういう感覚があります。
でも下の世代にはそんな感覚もないでしょう。
アニメや漫画と同じようにラノベも彼らの文化に溶け込んでいる。
それは井上さん達が展開したメディアミックスの成果なんじゃないですかね?
(ここ5、6年でラノベに対する考えをダイブ僕も修正して、フラットに楽しめるようにはなりました)

 

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