鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

今の自分のスタンスにフィットする考え方でした:読書録「論破という病」

・論破という病 「分断の時代」の日本人の使命
著者:倉本圭造
出版:中央新書ラクレ

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最近Xやnoteで倉本さんの論評を読ませていただく機会が結構多くて、
「割と自分の考えにフィットするところが多いなぁ」
と参考にさせてもらっていました
いろいろあるんですけど、メインは「分断」についてですかね。
それをテーマにした新作が出版されたということで買ってみました。
すごく興味深かったです。

 

(Amazonより)
自分と異なる意見を持つ相手を「敵」と認定し、罵りあうだけでは何も解決しない。今必要とされているのは、「メタ正義感覚」だ――。日本に放置されているコミュニケーション不全に対し、対立する色々な立場の間を繋いで成果を出してきた〝経営コンサルタント〟の視点と、さまざまな個人との文通を通じ、社会を複眼的に見てビジョンを作ってきた〝思想家〟の視点を共に駆使し、新しい活路を見いだす。
 堀江貴文氏失脚に象徴される日本の「改革」失敗の本質的な理由や、日本アニメの海外人気が示唆するもの……などをひもとくことで、「グローバル」を目指して分断が深まった欧米とは異なる、日本ならではの勝ち筋を見つけ、この20年の停滞を乗り越える方策を提示する。
 また、明治神宮外苑再開発問題、再エネvs原発の電力問題、川口市のクルド人問題、歴史認識問題――現代の具体的な課題を元に、解決に向かう考え方を示す。
 あらゆる「絶対」が無効化し、混迷が深まる多極化時代の道しるべとなる1冊。

 

大筋の内容は、倉本さんご自身が終盤にまとめられています。
こんな感じです。


その大枠をまとめてみると、以下の3点になるかと思います。
まず、
1「論破という病」を乗り越えるためには、抽象的な論争のための論争ではなく、現場の細部に入り込んで対立する両者の意見を良く聞き、その上で「対立する“私”」を超える「あたらしい公”」を生み出す解決策の方向性を考えていく「メタ正義的」解決が必要
次に大事な点が、
2 日本社会に大きなものから小さなものまで「百万個」の課題があるとすれば、その一つひとつについて、現場を取材した上での「百万個」の解決策の模索 (メタ正義的解決の種〟)と、それに真剣に取り組む「百万人」のメタ正義的解決のコーディネイターが必要
最後に、
3 非欧米の辺境にある日本においては、欧米由来の理想論を持ってくるだけだと、現実を単純化した善悪二元論で斬って終わりになってしまう。 「社会の“油側〟の事情=非欧米の辺境にあるリアルな課題」を迎えに行き、それを欧米型の理想と win-win の関係に持っていく取り組みが日本の使命
…………というメッセージも重要なところです。

 

理念や正義を振りかざして対決するんじゃなくて、具体的な問題の解決のために双方の意見や問題意識を丁寧に確認をして、現実的な解決への方策を練っていく
…そんな感じでしょうか?
本の中では、考え方を述べるだけじゃなくて、具体的なケーススタディーも取り上げられていて、その中で「メタ正義的」にどう考えていくかと言うシミュレーションパートもあります。
・神宮の再開発
・原発と再生エネルギー
・川口のクルド人問題
・歴史認識問題
自分の考えなんかと照らせ合わせながら、なかなか頭の体操になりました。
1番引っかかったのが「歴史認識問題」手当たりに僕の傾向みたいなものもあったりするのかなw。


本書の核になるのは「メタ正義」と言う考え方だと思うんですけど、状況認識の把握として提示された「水の世界」「油の世界」って言う概念も面白かったです。

水の世界:論理的で理念的な領域。現代のグローバル化や経済合理性を象徴するコンサルタント的な思考や、欧米の先鋭的なポリティカルコネクト的思考が含まれる。
油の世界:感情的で人間的、伝統的な領域。日本の地方社会や人々の絆、昭和的な価値観がここに含まれる。


割と現実世界では、対立する立場に思われるネオリベとフェミニズムが同じ「水の世界」にくくられるあたり、面白いなぁと思いました。
まぁ「分断」と言う視点から見ると、それも納得ではあります。
この2つの世界を対立させてどちらかが正しいと言うのではなくて、どちらの考えも認めながら、現実にある問題を見据えて、双方の納得もできるような解決策を模索していくというのが「メタ正義」的スタンスだと言うふうに僕は呼んでいます。


今の日本の状況が「油の世界」である昭和的な世界観を守ってきた失われた30年の上にあるとしても、そのことによって社会的安定が欧米に比べて一定程度保持されていると言うのは間違いない。
しかしながら、昭和的世界観が少子高齢化の進展などによって限界を迎えつつあるのも確かであり、このタイミングにおいて「水の世界」的価値観を取り入れていくことによって、社会の安定性を維持しながらも、経済成長や所得の増加につながるような新しいステップに進むことができるのではないか


こういう考え方が正しいかどうかは分かりませんが、今更30年タイプスリップできるわけでもないので、前向きに捉えて次のステップに行こうと言うのは建設的で良い考え方なんじゃないかと思います。
東浩紀さんの訂正可能性何かつながる話だと思いますし、安野貴博さんや石丸伸次さんなんかの取り組みも結構似たような問題意識に根ざしているような気がします
まぁこれは僕がそういう問題意識を持って、彼らの著作や活動を見てるからっていうのがあるかもしれませんけどw。


まぁ、難しいスタンスなのは確かではあると思いますけどね。
簡単に一言ですぱっと片付けられるようなスタンスじゃないですから。
でもまぁ確かに現実的には、これがベターなスタンスだとは僕も思います。
結局のところ、分断を回避しながらリベラル的な価値観をどうやって現実につないでいくかって言う話なんですよね。
日本にはまだその可能性があると言うのは確かなんじゃないかな?
結構危ういところも見えてるけど…。


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