鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ディストピアでもユートピアでもなく…:読書録「AIとSF」

・AIとSF
編者:日本SF作家クラブ
出版:ハヤカワSF文庫(Kindle版)

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もともとは安野貴博さんの短編が収められていると言うことで気になってた1冊ではあるんですよね。
まぁでも1つの作品を読むだけのために買うのもどうかなぁとも思って躊躇たんですが、最近この短編集の続編(「AIとSF2」)が出版されたのを知って、「確かにAIっていうのは今SF小説家にとってかなり旬なネタなんだな」と思い直して読んでみることにしました。
結論から言うと、かなり面白かったですね。
一気に読むと言うよりは、1週間位かけて読んだんですけど、充実感がかなりありました。

 

<概要>
ハヤカワ文庫の『AIとSF』は、日本SF作家クラブ編纂によるアンソロジーで、22名の作家がAI技術の進化と人類の未来を描いた短編小説を収録しています。画像生成AIやChatGPTなど、急速に発展するAI技術が人類文明に与える影響を多角的に探求しています。各作品は、2025年の大阪万博におけるAIの進化、チャットボットの孤独、AIカウンセラーの献身、シンギュラリティなど、多様なテーマを扱っています。本書は、AIと人類の未来を考察する上で、多くの示唆を与えてくれる一冊です。

(ChatGPTサーチ)

 

<目次>
1. 長谷敏司「準備がいつまで経っても終わらない件」
2. 高山羽根子「没友」
3. 柞刈湯葉「Forget me, bot」
4. 揚羽はな「形態学としての病理診断の終わり」
5. 荻野目悠樹「シンジツ」
6. 人間六度「AIになったさやか」
7. 品田遊「ゴッド・ブレス・ユー」
8. 粕谷知世「愛の人」
9. 高野史緒「秘密」
10. 福田和代「預言者の微笑」
11. 安野貴博「シークレット・プロンプト」
12. 津久井五月「友愛決定境界」
13. 斧田小夜「オルフェウスの子どもたち」
14. 野﨑まど「智慧練糸」
15. 麦原遼「表情は人の為ならず」
16. 松崎有理「人類はシンギュラリティをいかに迎えるべきか」
17. 菅浩江「覚悟の一句」
18. 竹田人造「月下組討仏師」
19. 十三不塔「チェインギャング」
20. 野尻抱介「セルたんクライシス」
21. 飛浩隆「作麼生の鑿」
22. 円城塔「土人形と動死体 If You were a Golem, I must be a Zombie」


SF でAIを取り扱うと、どうしてもディストピアっぽくなるって言う印象があります。
物語として、エモーショナルなものにしようとすると、そうなりがちっていうのは確かにあるでしょう。
本書に収められた短編の中でもディストピアっぽいものは確かにあります。
でもそれ以上に割とフラットな感じのものが多かったのがちょっと意外な感じがしました。
まぁユートピア的なものは流石にそんなにないですけどw。


ここら辺、鉄腕アトムやドラえもんに馴染んだ、日本独特な感覚っていうのがあるのかもしれません。
「AIと会話するって悪くないじゃん」って僕自身思ってますし。
まぁさすがに僕が日本人の平均値だと思いませんけど、SFを描くような作家だと、割とこっちよりの感覚が強くなるんじゃないかなぁ。
実際そういうラインナップになってると思います。


その一方で、結構「格差」って言うのが作品の中に組み込まれているケースが多いなぁっていうのも個人的には気になりました。
日本ってアメリカほど格差が広がっているとは思いませんけど、やっぱり今後の方向性を考えると、経済格差が広がって分断が生じてくるっていうのは、ある程度未来予想図として共有されているところがあるんですかね。
AIに支配されるとか、AIが人類を滅ぼすとか言うよりも、そういう格差と分断が日本を覆っていくって言うことの方が、なんだか気持ちが暗くなってしまいます。
いや、だからって、滅ぼされたくはないですけどw。


続編となる短編集が1年ほどで出版されたって言う事は、やはり「AI」がSF小説家にとって旬なテーマっていうことなんでしょうね。
実際ChatGPTとかこの1年だけでもものすごい勢いで進化しちゃってますから。
それを踏まえて、作家たちの未来予想図がどうなっていくのか、それをまたちょっと楽しみではあります。
やっぱりディストピアの傾向が強くなるのかなあ。
しばらくしたら、続編のほうも読んでみるつもりではあります。
現実の方がどんどんどんどん先に行っちゃうかもしれませんけどw。


#読書感想文
#AIとSF
#日本SF作家クラブ