鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ドラマチックな展開も抑えた筆致で。:読書録「ツバキ文具店」

・ツバキ文具店
著者:小川糸 ナレーター:多部未華子
出版:幻冬舎文庫(audible版)

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なんかヌルい作品を読んで(聴いて)みたいなと思って、チョイスした作品。
小川さんの作品は読んだことないんですけど、「食堂かたつむり」の作者さんってことは知ってて、そこらへんの全体的なイメージで…なんですけどねw。
前半はまあ、確かにそんな感じ。
でも終盤にかけて、個人的にはちょっと印象が変わりました。


<あらすじ>
『ツバキ文具店』は、小川糸さんによる小説で、鎌倉の古い文房具店を舞台に、手紙の代書を生業とする主人公・雨宮鳩子(通称ポッポちゃん)の物語です。 

幼少期から厳格な祖母のもとで育った鳩子は、反発心から家を飛び出し、長らく故郷を離れていました。しかし、祖母の死をきっかけに鎌倉へ戻り、文具店と代書屋を継ぐことを決意します。

文具店を営みながら、鳩子のもとにはさまざまな依頼が舞い込みます。友人への絶縁状、借金のお断り、天国からの手紙など、多岐にわたる手紙の代書を通じて、依頼者の心に寄り添い、その想いを丁寧に言葉にしていきます。 

物語を通じて、鳩子は人々との交流を深め、自身の過去や祖母との関係にも向き合いながら成長していきます。鎌倉の美しい風景や、手紙を通じて紡がれる人間関係が温かく描かれた作品です。
(ChatGPTサーチ)


鎌倉を舞台にして、祖母がやっていた店と仕事を引き継ぎ、細々ながらも手仕事をしつつ、ご近所や周りの人たちとの人間関係を温かく深めていく…
まあ、そんな感じで、正直、
「けっ!また鎌倉かよ」
って感じもw。
(これは「また京都かよ」にも通じるんですけど)


小さいとは言っても鎌倉に不動産持ってて、生活していけるだけのビジネスやってるなんて、それだけで勝ち組やん。


まあねぇ。
そう言う向きもないではないですかねぇ。
すごく丁寧な暮らしをしているし。(ただし金銭的に贅沢をしてるわけではない)
少し前にこういう趣きの作品が受けてたのは知ってるんですけど、今現在どうなのかは、ちょっとわかりません。
今じゃ「団地のふたり」になるのかなぁ。
よう知らんけど。


ただこの作品、終盤になってちょっと物語が変調します。
鳩子を育て、鍛えた祖母である「先代」。
彼女が抱えていた<秘密>が突然明かされ、鳩子の足元が揺らぐような事実が飛び出してくるのです。
ヤスデのドラマだと、
「ジャジャーン!」
みたいなBGMが流れそうなとこなんですけど、本書の筆致は抑えられたまま。
…なんだけど、端々から鳩子の心情の揺らぎのようなものが垣間見えるようになります。
読みどころはここかなぁ。
連作短編みたいなところがあって、求められた代書仕事の成り行きなんかをのんびり聴かせてもらってたんですけど、終盤は割と一気に聴いてしまいました。
決して心温まる関係でなかった祖母と孫。
でもそれが改めて紡ぎ直される過程が描かれます。
上手い作者さんですね。
読後感もすごくいいし。


この作品、書籍だと書かれた手紙は手書きのものが載ってたようです。
一方、オーディオブックの方は、数年前にドラマ化された時にヒロインを演じられたらしい多部未華子さんがナレーターをされています。
なかなか良い雰囲気です。
続編も発表されていて、そちらも引き続きオーディオブックになるようですので、シリーズはそっちで追いかけることにしようかな。
手書きの手紙も魅力ではあるんですけど。


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