・笑うマトリョーシカ
著者:早見和真 ナレーター:蒼木智大
出版:文藝春秋(audible 版)
テレビドラマ化されていますね。
そっちの方は見てなかったんですが、併せてオーディオブックにaudibleになったので、聞いてみることにしました。
かなり面白かったです。
サマリー
若き総理候補が誰かの操り人形だったら? 人の心の闇に迫るミステリー
有望な若き代議士の周りには彼を操ろうとしている人たちが。ニセモノが総理になっていいのか。
そう感じた女性記者が彼らの闇に迫る。
(audibleより)
早見さんは一時期、愛媛に住んでおられて、舞台にした作品を何作か書かれています。
本作の主人公も愛媛県出身(愛南町で育ち、高校は松山の私立に)。
松山の私立高校…っていうんで、もしかしたらモデルは我が母校…とかとも思ったんですが、まあ違いますねw。
むしろ東高の方が近いかも。
若くして官房長官に上り詰めた政治家・清家一郎の自伝についてインタビューをした女性記者/ライターが、清家の「本性」に疑念を持ち、高校の同級生だった政策秘書、元・恋人、母親…と追いかけていき、彼を「操る」人物の存在を追う…というのがメインストーリー。
自伝、秘書・恋人・母親の独白等々から清家の今に至るまでの歩んできた足跡が語られ、最後には彼自身が…という展開となります。
(以下、ネタバレあり)
ヒトラーを操っていたというエリック・ハヌッセン。
そういう存在が主人公にもいるのでは…と女性ライターは追いかけるわけですが、最終的には「そんな人物はいなかった」。
自分を操ろうとする人々を利用しながら、彼らの<欲望><希望>を自分のものとしながら政治家として成功して行ったのだ。
…というのが最終的なネタとなります。
清家一郎自身は「中身に何もない人物」なのに…。
聴き終わった後に、
「さて、ドラマはどういう風に描いてるのかな」
とちょっと気になって最終回だけ(w)見させてもらったんですが、この「中身のない人物がのし上がっていく」不気味さを、ドラマは強調していましたね。
演じるのは櫻井翔さん。
いや、なかなか見応えありましたよ。
ただ個人的には、
「それってそんなに悪いことかね」
って感じもありましたけどw。
僕自身としてはむしろ何だか凝り固まったような「信念」みたいなものを振り回される方がちょっと気持ち悪かったりもするんですよ。
だって、その「信念」の正当性とか、妥当性、歴史的意義なんてのは、誰も保証してくれるわけじゃないじゃないですか。
ポピュリズムの危うさが確かにある一方で、信念や正義が決定的な悲劇を生むことだってありうる。
そこを決定的に分つものなんてないんじゃないか、とも思ったりします。
ドラマの方はそこにジャーナリズムの価値のようなものを訴えてましたが、ドラマとしてのオチとしては据わりはいいかもしれないけど、
「いやいや、ジャーナリズムだって…」
と僕は思ったりするわけです。
そう言う意味じゃ、原作のスッキリしない感じの締め方の方が僕は好きですね。
清家一郎のモデルって「小泉進次郎」でしょうかね?
出自とか全く関係ないけどw、何となく連想しちゃうのは、僕が「中身がない」って小泉進次郎を見てるから?
なんちゅう失礼なw。
でも与野党の代表選挙が行われるこのタイミングで、
「政治家ってのは」
って考えるにはなかなか興味深い作品だと思いますよ。
楽しめますし。
ナレーターもお上手で、グイグイ引き込まれました。