鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

作品の中の「ミステリ講釈」をもっと読みたかったw。:読書録「硝子の塔の殺人」

・硝子の塔の殺人

著者:知念実希人

出版:実業之日本社

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知念さんはコロナ禍で「医師」の立場からTwitterで積極的に情報発信されています。

ちょっとおかしな方向に行っちゃったこともあるんですが、基本的にその姿勢に僕は尊敬の念を持っています。

そのシンパシーから、評判になってる本書も購入しました。

 


しばらく「積読」になってたんですがw、読んでみたら、「こりゃ、ナカナカ…」。

実は中盤、ちょっとダレるというか、引いちゃう感じもあるんですが、「それも含めて」本書の仕掛けには唸らされました。

本書の帯には<新本格派>の作者さんの推薦の言葉が並んでいます。

結構「新本格派」の皆さんは仲がいいので、「仲間意識」が強く出過ぎるところがあると思ってるんですけど、これについては「仲間意識」だけじゃない感嘆の思いがあるんじゃないかな、と。

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推理小説なんで、とにかく何言ってもネタバレになりそうで感想なんて書けないんですがw、ある意味、島田荘司さんの寄稿(最後に収められています)が全てかも。

 


<時代が平成に入り、令和にかかるまで、日本の推理文壇を、全員二十代という書き手たちが支える、世界でも珍しい現象があった。当『硝子の塔の殺人』は、「新本格」と呼ばれたこの特殊な時代を令和の上空から俯瞰し、丹念に総括し、ジャンルの作法を完璧に使いこなして、ブーム終幕に、誰も予想しなかった最高作を産み落として見せた、これもまた、なかなか世にない事件と思う。>

<知念氏自身、これから新しい歩みを踏み出すだろうが、新本格時代を担った多くの才能たちも、これをきりにして、年月を重ねて熟した筆と思想を携え、さらに先の新世紀ミステリーを切り拓かんとする決意を、自覚することだろう。>

<われわれはここに時代の意志を読み取り、過去の達成を胸にたたんで、新たな前進を開始しなくてはならない。>

 


何を煽って、ハードルあげてんねん…って文章ですがw、読者としてはそういう時代が来てくれるのであれば、それはそれで嬉しいこと。

こういう文章を書かせる「何か」が本書にあるのは、僕は「納得」ではあります。

 

 


個人的には作中で繰り広げ「かける」<ミステリ談義>をもっとジックリ読ませて欲しかった気分もあるんですけどね。(作中の人物が滔々と語り始めると、必ず誰かが茶々を入れて中断するパターンになってます)

なかなか興味深いとこ突いてますし、作品そのものにも深いところで関係してることが語られてると思うんですが。

…ってまあ、そんなことやってたら上下巻でも収まらなくなりますか。

それでもいいから…と思わなくもないんですが、エンタメ作家としての知念さんはそういうのを「ヨシ」とはしないかな?

 


本格・新本格推理に興味がある方なら、一読して損はない作品と思います。

途中、「ん?」と思っても、ぜひ最後までページをめくって下さい。

 


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